⻫藤和義、気心知れたバンドメンバーとのスタジオライブに「顔を合わせて演奏しながら『あ、これこれ』という感覚がありました」
気心知れた仲間たちは「音楽家として幅があるメンバー」
――メンバーは斉藤さんに加えて、ギターが真壁陽平さん、ベースが山口寛雄さん、ドラムが平里修一さん。アルバム『202020』を作った仲間ですね。『202020』自体、かなりスタジオセッションに近い録り方をしたシンプルな作品でしたが、改めてこのバンドの持ち味について教えていただけますか?
真壁君、山口君とは昔から一緒に活動していて、平里君は今回のアルバムから参加してくれたんですけど、まず3人ともものすごいテクニシャンなんですね。それこそ初めて演奏する楽曲でも、1回でバシッと合わせられるし。
僕があまり得意じゃない音楽理論の方面にも詳しい。例えばジャズとかファンクみたいに高度なスキルが求められるジャンルでも、全然いけちゃう人たちです。じゃあテクニック至上主義かというと、そうじゃない。
今回のライブを観てもらうとよく分かると思うんですが、技術的な部分は完璧に押さえつつ、あえてそれを崩して遊んだり。曲によっては、思いきりシンプルでラフなロックンロールもバリバリ演奏できる。要は、音楽家として幅があるっていうのかな。
今回スタジオライブで僕の過去曲を演奏した際にも、オリジナルバージョンの気配はちゃんと残しながら、今のバンドの空気感をうまく表現してくれました。その辺のさじ加減も信頼できるというか、すごく助けられています。
「この数カ月間の状況は、無意識のうちに曲選びに影響していた」
――演奏する曲はどうやって決めたのですか?
そこは、あまり深く考えず(笑)。 気楽に選びました。新しい『202020』からは、ライブで演奏して楽しそうなファンキーな楽曲をいくつか。あと、これまでのライブでは披露してなかった曲も2つほど演奏しています。
過去の曲については、単純に4人という最小限のバンド編成で演奏できて、なおかつライブならではの進化なり変化も期待できそうなもの、ですかね。
ただ、収録してみて後から思ったんですが、新型コロナウイルスによって生じたこの数カ月間の状況は、無意識のうちに曲選びに影響していた気はするかな。
――どういうことでしょう?
例えば、今回初めてバンドで演奏した「一緒なふたり」もそう。この曲は昨年、日本盲導犬協会のキャンペーン用に書いたものなんですね。
でも、この状況で改めて歌ってみると、歌詞の中に出てくる“新しい世界”というワードがまた違った意味にも感じられて。そんなつもりで選んだわけではなかったんですが、作者である自分にも発見がありました。
あと、「I Love Me」って曲なんかも、どこかコロナ禍の世相と繋がってるようにも思えた。「ハミングバード」というナンバーも、僕の中ではそういう感じがありました。
――「ハミングバード」は2006年リリースの楽曲。今回のスタジオライブでは、斉藤さんがギター1本で弾き語りをしています。
はい。思い出してみると、この曲を書いた前後って、個人的にちょっと元気がなかった時期だったんです。はっきりした理由は見付からないけど、何となく面白くない、みたいな感じで…。気持ちがどんよりしていた。
で、そういう状況を打破するため、 自分に向けて書いた曲が「ハミングバード」だったので。10年以上たった今、 こういう状況でまた歌いたい気分になってたというのは、自分でも面白いなと思いました。
まあ、この自粛期間中はほぼ外出もせずに、ひたすら自宅で過ごしていたので。すっかり休み癖が付いた自分を「働け!」と鼓舞する意味もあったかもしれません(笑)。