染谷将太が鬼才監督の問題作「ヒミズ」で新たな一面を開花!
「愛のむきだし」('08年)、「冷たい熱帯魚」('10年)、「恋の罪」('11年)と過激でエネルギッシュな作品を次々と世に送り出し、映画ファンから熱い注目を浴びる映画監督・園子温。彼が漫画家・古谷実による衝撃作を映画化した「ヒミズ」が、7月3日(火)よりブルーレイ&DVDでリリースされる。愛のない家庭で育った15歳の住田(染谷将太)と茶沢(二階堂ふみ)の孤独で絶望的な青春を鮮烈な映像でとらえたこの作品は、製作中に発生した東日本大震災を物語の中に取り入れ、震災直後の被災地でロケを敢行しており、震災後を生きる人々の希望を力強く描いたことでも大きな話題となった。また、主演の染谷と二階堂は、第68回ベネチア国際映画祭で日本人初となる最優秀新人賞を受賞している。その染谷に、改めて「ヒミズ」について聞いた。
――園監督の作品が前から好きだったそうですね。園監督の演出は厳しいことで知られています。始めは「いっしょにやるのが怖かった」ということですが、実際撮影をしてみて印象が変わったりしましたか?
ボロクソ言われるんだろうなと思ったんですけど、想像以上に優しくてびっくりしました。最初に「お前とは絶対仲良くなんないから」って言われたんですけど、クランクインしたらめちゃめちゃ仲良くなっちゃって(笑)。意外でした。今までの伝説はいろんな方から聞いてたんですけど、「ヒミズ」のときはそうでもなかったんです。でも、「そんなんじゃ全然だめだ」とか「そんなんでいいのか」とかいろんなことを言われました。そのとき、ちょっとイラッとするんですよね。挑発しているのかわかりませんが、もっとやってやるぞって気持ちになってくるんです。本当に役者を乗せるのが上手い方ですね。
――自分の意外な一面を引き出されるようなことはありましたか?
生まれて初めてあんなに怒鳴りました。あんなに怒鳴ったことは人生でなかったです。
――雨のシーンや泥だらけのシーンが多くて印象的でした。
園さんは全シーン降らせたいぐらいの勢いだったらしいですが、いろいろあって降らせるシーンが限られていて。だけど撮影期間中は天気の悪い日ばっかりで、(住田が)父親を殺すシーンは本当に降った雨です。
――父親を殺すシーンは顔もよく分からないくらい全身泥だらけになりますね。
その日は降らす予定はなかったんですが、たまたま降ったので、ああいう状況になりました。それでこのポスター(映画のメーンポスターは泥だらけの染谷の顔がアップになっている)も出来上がった。偶然です。
――仕事を離れたら役は引きずらない?
と思っているんですけど、友達は「あのときのお前はひどかった」って言いますね。「暴力的だった」って(笑)。特に何かしたわけじゃないですけど、暴力的な感じというか、おかしかったって。そう言われると確かにそうだったかもしれない。
――好きなシーンはありますか?
住田たちとヤンキーグループがボート小屋の前で大乱闘する幻の未公開シーンがDVDに入っているんですけど、それは必見ですね(「コレクターズ・エディション」に収録)。そこだけ映画が違う。ちょっとコメディーチックな大乱闘シーンなんですよ。撮っている時もこのシーンカットされるだろうなと(笑)。
――映画を見た回りの反応、反響はどうでしたか?
「ちゃんと働いてるんだね」って(笑)。逆に知り合いといてボケーっとしてたら「ガッカリだよ! あんなに住田すごかったのに、何なの今?」って言われて(笑)。父親にも言われました。「お前毎日バカみたいにボーっとしてるだけじゃねえんだな」って。なんかうれしかったですけど。
――ベネチアで賞を取りました。染谷さん自身はその前後で気持ちに変化ありましたか?
賞を頂いたと聞いたときは怖かったですね。すごい報道されているのを見て、こんなに大ごとなのかと思ってちょっと不安に駆られたんですけど、それから普通に、別に特に何も変わってないので、よかったって感じです(笑)。
――震災が作品の重要なモチーフになっています。
準備中に地震が起きて、撮影自体が延期になったんですよ。延期になっている最中に園さんが台本を書き換えてあの形になりました。
――現実の震災を物語に取り入れることについてはどう思いましたか?
変わった台本を読んだ時に、まず一番最初の台本は原作と同じだったんですね。それがまったく違うラストに変わっていて、変わった台本を読んだ時素直に感動したんですね。これはすごいホンになってると思って、がぜんモチベーションが上がりましたね。
――「ヒミズ」でファンだった園監督の作品に初めて出ることになったわけですが、今、ほかに気になる監督はいますか?
中学生のときに豊田利晃監督の映画を見てすごい衝撃を受けたんです。豊田監督はそのときからご一緒したいなと思っています。あとはジム・ジャームッシュ監督と仕事がしたいです。
7月3日(火)発売
DVD2枚組 4935円
ブルーレイ1枚組 6090円
ポニーキャニオン