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本広監督が明かす「踊る―」ファイナルの裏設定とは?

2013/04/25 06:00

撮影秘話を明かす本広克行監督
撮影秘話を明かす本広克行監督

国民的人気シリーズ「踊る大捜査線」の完結編「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」のDVD&ブルーレイが、4月26日(金)に発売。

同シリーズは警視庁湾岸署を舞台に事件解決に奔走する警察官たちの姿を描いたもので、テレビドラマ開始から15年に渡る歴史のラストを飾る同作は、映画公開前から注目を集めていた話題作。

今回、同シリーズの監督を務めた本広克行氏にインタビューを敢行し、テレビドラマから“国民的シリーズ”と言われるまでに人気を博した15年間を振り返ってもらい、それぞれの作品に懸ける思いや当時の心境を語ってもらった。

――15年にわたる人気作で社会現象までになった「踊る―」シリーズですが、最初のテレビドラマの時からその予感はしていたのですか?

いえいえ、作っている当時は「ビデオにすらならない」って言われていたんです。ビデオになるかならないかというのは、既成の音楽を使えるか使えないかに関わってくるんですが、「ビデオには、ならないから好きにやっていいよ」と言われて、「それなら!」と、ハリウッド映画の壮大な音楽を使っていたりしていたくらいなんです。ところが、後から「なんだかビデオになるっぽいよ…」と言われて、(ビデオでは)急きょ直したりしたんですが…(笑)

――日本の映画史を変える大ヒットを果たした映画一作目は、どんな心境で撮影していたのですか?

当時、映画は“興行収入10億円で大ヒット”と言われた時代で、映画はビジネスになっていない気がしていたので「なんでこれを映画にするんだろうな?」っていう気持ちが正直ありました。でも、僕は映画に携わりたくて田舎から出てきたので「映画が作れるなら何でもいいかな」と(笑)。「これは、そんなにお客さんが来ないんじゃないか」って思いながらも「映画が撮れる! 35ミリ(のフィルムが)回せる! 思いっきりやれることをやろう」と思って撮影に臨みました。「壮大なるワン落ちのコントをやろう」と思っていて、ラストが“主人公が死ぬ!”という結末で感動的に幕を閉じていくのかな…と思いきや「主人公が寝ていました」というオチにしたんです。「感情を“泣き”から“笑い”に転じさせると、“笑い”が増幅する」という大いなる実験をさせてもらったんですが、まさかあんなにうまくいくとは思いませんでしたね。見終わった時に「あした、頑張らないとな」と見た人が元気になる映画になるようにという思いで作ったので、当時は「笑って、泣けて、元気になる映画」って言っていたんですよ。

――映画二作目では、プレッシャーはありましたか?

プレッシャーがすごかったのは、プロデューサーの亀山千広さんですね。僕はもう「本当に面白いものを作ろう!」という気持ちだけだったので。脚本の君塚良一さんは、冷静に分析して「一作目と同じことをやろう。新しいものをやっても、みんな喜ばないだろう」と、完璧に同じことをやっている。娯楽映画の呪縛というか…どうしようもないですよね。それをやるしかない。新しいことをやると「それは、いらない」と言われてしまうので、ちょっとずつ挑戦もしながら王道をやるという感じでした。

――ファイナルを製作するにあたっては、特別な心境もあった?

そうですね。会議室で青島が警察官についてスピーチするというラストシーンでは、君塚さんに(台詞の)原稿を書いてもらって、その原稿に僕が言葉を足して、それを織田(裕二)さんに言葉にしてもらって、現場で直して…というのを一カ月くらいかけて作り上げましたね。でも、そこまでやった甲斐はあったなと思います。織田さんもすごく気持ちを入れてスピーチしてくださって、あそこはもうちょっと長くてもよかったなと。コアなファンの方たちは、すぐに気付いたみたいなんですが、あのシーンはテレビシリーズ第一話の冒頭と同じ部屋なんです。同じ向きで、同じ位置で、全く同じ場所で、最後の締めの言葉を言っている。最初は、署長たちがいて青島俊作(織田)を新しい警察官として採用するかという面接をしていたんですが、最後は室井慎次(柳葉敏郎)たち警察上層部に対して、青島が意見をしているというのが、良い終わり方だなぁとしみじみ思いますね。

――今だから言える演出のこだわりは?

実は、恩田すみれ(深津絵里)と青島の抱き合って愛を語り合うシーンは、僕と深津さんの中では“すみれはすでに死んでいる”という設定にして演出しているんです。きっかけは、あのシーンでのすみれの台詞。今までのすみれの性格では、あんな台詞絶対言えないんです。深津さんも(すみれとしては)「生きてる限り無理ですよ! こんな台詞…」ってなって、「分かった。じゃあ、すみれさんが死んでるというふうにしたらどうなんだろう?」って言ったら、「それだったら言える」と。しかも、脚本上、このシーン以降は1カットもすみれは出てこないんです。もちろん、ハッピーエンドだと思って見ている人は、そのままハッピーエンドだと思ってもらって正解ですし、近しい人が最近亡くなったというような強い喪失感を抱えた人には、「すみれが死んでいるのでは」というメッセージが伝わるみたいです。そんな演出の実験をしてみました。公開当時に言ってしまうと「そんな結末見たくないよ」と言われてしまうので、本当に今だから言えるんですが。僕は、映画は解釈だと思っていて、その人のそれぞれの感じ方でそれぞれのメッセージがあるもの。ハッピーエンドと捉えてくれる人にはハッピーエンド、すみれが亡くなったからこそ二人が愛を語り合う素敵なシーンになったんだと感じる人がいてもいい。これが僕の演出の最大の挑戦でした。あのシーンをそういう視点で見ると、本当に泣けるんですよ。撮っている最中も泣けちゃって、泣けちゃって…。みんな「なんでそんなに泣いているんですか?」って聞いてくるんですけど、「だって、もう死んでるもん…」って自分の中で思いながら…。魂を抱いているから、カメラワークもそういうふうに撮っているんです。

――最後にメッセージをお願いします!

「踊る―」シリーズは、いろんな映画の要素が入っているので、ファイナルまで順番に見ていっていただくのも楽しいと思いますし、キャラクターに自分を当てはめてみるのもいいと思います。また、ディティールをすごく細かくやっているので、いろんなところを犯人が歩いていたり、小道具が繋がっていたりという、このソフトならではの楽しみ方もお薦めです!

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」
【プレミアム・エディション】
DVD(3枚組:本編DVD+特典映像DVD2枚) 7140円
Blu-ray(3枚組:本編BD+特典映像DVD2枚) 8085円
【スタンダード・エディション】
DVD 3990円
Blu-ray 4935円
【踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 FINAL SET】
DVD(7枚組:「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」プレミアム・エディションDVD+「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」DVD+「係長青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている!」DVD+「深夜も踊る大捜査線 THE FINAL」DVD+FINAL SET専用特典DVD) 1万8060円
Blu-ray(7枚組:「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」プレミアム・エディションBD+「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」BD+「係長青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている!」DVD+「深夜も踊る大捜査線 THE FINAL」DVD +FINAL SET専用特典DVD) 1万9950円

全て4月26日(金)発売
ポニーキャニオン

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