スタジオジブリが、9月6日、都内で宮崎駿監督の引退記者会見を行い、宮崎監督、鈴木敏夫プロデューサー、星野康二代表取締役社長が登場した。
13カ国の海外メディアを含む約200媒体、605名の取材陣が参加し、約一時間半に渡った会見は主に質疑応答に時間が割かれた。
会場に登場した宮崎監督は「『公式引退の辞』というメモを皆さんにお渡ししてありますので、なんでも質問していただければ答えるというかたちでごあいさつにしたいと思いますが、ひと言。僕は何度も辞めると言って騒ぎを起こしてきた人間なので『どうせまただろう』と思われているんですけど、今回は本気です(笑)」と愛嬌たっぷりにあいさつし、会場を沸かせた。
また、鈴木プロデューサーは「『始まったものは必ず終わりが来る』そういうものだと思います。僕の立場で言うと、落ちぶれて引退するというのはかっこ悪いと思ってましたので、ちょうどいま『風立ちぬ』という映画が公開されていて、それがいろんな方に支持されている時にこういうことになったというのは、そういう意味でよかったんじゃないかなと思います」と明かした。
二人のあいさつの後、行われた質疑応答では数多くの質問が寄せられた。
その中で、引退を決意した経緯について聞かれた宮崎監督は「僕はアニメーターだからまず絵を描かないと表現ができないので、一日中ずっと机に向かっているんです。それでも『崖の上のポニョ』から『風立ちぬ』までは5年もかかっています。『公式引退の辞』にも書きましたが、次の作品を作るには6年か7年はかかってしまう」と告白。
今後については「車が運転できる限りは毎日アトリエに行こうと思っています。それで、やりたくなったものややれるものはやろうと思っています。(具体的には)ここで約束すると、多分、大抵破ることになると思いますのでご理解ください(笑)。前からやりたかったことがあるので、そっちをやろうと思っています。それはアニメーションではありません」と話しながらも「ジブリ美術館の展示については関わらせてもらいたいと思っています。自分が展示品になっちゃうかもしれませんが」と言って笑いを誘った。さらに、若手スタッフの作品に関わる可能性を聞かれると、「ありません！」と完全否定し、「僕の長編アニメーションの時代は、はっきり終わったんだと決めています。」と決意が固いことを明かした。
ほか、これまでの作品を振り返って「一番、自分の中に棘のように残っているのは『ハウルの動く城』です。ゲームの世界をドラマにしようとした結果、本当に格闘しました。でも、自分が立てた企画だからしょうがありません(笑)」と語り、「基本的に、子供たちに『この世は、生きるに値するんだ』ということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければいけないと思ってきました。それはいまでも変わりません」と告白。
ジブリの今後について鈴木プロデューサーが「今後のジブリについての問題は、いまジブリにいる人たちの問題でもあると思うんです。その人たちがどう考えるかによって決まると思う」と明かすと、宮崎監督は「やっと上の重しがなくなるんだから、『こういうものをやらせろ』っていう声が、若い人から鈴木さんの元に届くことを願っています。それがない時は、鈴木さんが何をやってもダメだと思う」と期待を寄せた。
最後に宮崎監督は「本当に長い間いろいろお世話になりました。二度とこういうことはないと思いますので…(笑)。ありがとうございます」とあいさつし、会場を後にした。
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