アニメ映画「サカサマのパテマ」吉浦康裕監督インタビュー(1)~ユニークなサカサマ世界が生まれるまで~

2014/03/31 20:31 配信

4月25日(金)にBlu-ray/DVDが発売されるアニメ映画「サカサマのパテマ」

4月25日(金)にBlu-ray/DVDが発売されるアニメ映画「サカサマのパテマ」

4月25日(金)にBlu-ray/DVDが発売されるアニメ映画「サカサマのパテマ」('13年)の吉浦康裕監督に、作品やキャラクター、スタッフなどについて話を聞いた。

――作中の「重力が働く方向が正反対の二つの世界がある」というアイデアはどこから生まれた発想でしょうか。

吉浦:そもそもの企画の成立に立ち返ると、動機は結構シンプルなんです。子供のころ、晴れた日に空を見上げていると空にひゅっと落ちてしまいそうだと妄想をしていたことありました。そのイメージがスタート地点で、そこから「逆さまの人間がいて空に落ちそうである」というビジュアルが思い浮かんだんです。少年がサカサマの少女をつかまえているという、映画のポスターの原型となった絵もその時点で描いてありました。映画のコンセプトは、一言で言い切れるぐらいシンプルな方がいいと思います。

――ビジュアルからスタートしたんですね。

吉浦:そこから「これでどういう面白い物語が作れるだろうか」と考え始め、キャラや世界観を固めていきました。注意したのは、この「逆さま」というビジュアルの面白さを、ちゃんと観客の心を動かすような内容へと落とし込まないといけないということ。そうでないと単なる「面白い映像を作った」というだけで終わってしまうので。では「手を離さないと彼女は生きていけない。空に落ちてしまう」という絵のモチーフから何を引き出すことができるか。そこからは理屈で考えていって「同じ場所にいるけれど、全然違うものを見ている二人」ということが導かれてきて、これなら普遍的なテーマになるだろう、というところに行き着きました。

――非常に寓話的な内容でもあります。

吉浦:実は僕はSF的な題材をよく扱う作家だといわれることが多いんです。人間とアンドロイドの関係を描いた「イヴの時間」の印象が強いんだと思うのですが、スタッフに言わせるとちょっと違う。SFはSFでもサイエンス・フィクションではなく、藤子・F・不二雄先生のいう“少し不思議”の方じゃないかと。それは確かにそうで、細かい設定や科学的考証に重きがあるというより、SFというガジェットを使って何かを分かりやすく伝えることが多い。そういう意味では「サカサマのパテマ」もそういう作品になっていると思います。

――テーマが見えたことで物語も具体的に固まり始めたのでしょうか。

吉浦:そうです。最初はかなり冒険活劇寄りで考えていましたが、テーマが見えてきたことで、むしろ二人の関係性を描く映画…恋愛映画のように描いた方がいい作品だな、と。そういう方向転換はありましたね。予算のスケールからしても、恋愛映画の方がちょうどいい感じでしたし。

――長編には初挑戦ですが、脚本執筆の苦労はありましたか?

吉浦:そこはむしろスムーズでした。短編をいろいろ書いてきたおかげで構成力が身に付いていたのだと思います。短編的なアイデアを引き延ばして作った大きな流れの中に、さらに短編要素を詰めていくような感じで脚本を書きました。自分の中にある短編のノウハウを総動員して作った感じです。

――映像の見せ方も、テーマと密接に結びついてすごく凝縮されていました。

吉浦:コンセプトが上下ですから、横方向への移動が増える「冒険」の要素はできるだけカットして、縦方向の移動を中心に描こうとしました。作画枚数は2万枚強なのですが、このジャンルのアニメとしてはすごく少ないんです。それは縦移動の表現を、キャラクターをスライドさせることで省力化したからです。その分、自分が得意なカメラワークを生かした演出を心掛けました。

――これまでの監督作品と比べるとロングショットも多く、やはり映画ということを意識して演出されたのでしょうか。

吉浦:今回、映画を作ると最初に決めた時、「ドアの外に出るアニメを作ります」と意志表明をしました。「イヴの時間」を作って僕の20代は終わったんですが、20代を振り返ると椅子に座ってしゃべるアニメばかり作っていたな、と(笑)。それで、ここらでちょっと違うことをやろうと。今回は、全体をまず3幕構成に従って4分割して、各ブロックに必ず何かスペクタクルなシーンを入れようと考えました。

――空に落ちた先のサプライズは、インパクトがありました。

吉浦:次第にディテールが浮かび上がってくるところは、実は押井守監督の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」('84年)を意識して演出したところなんですよ(笑)。あの展開は物語も後半に差し掛かっているのに、なお新展開が起こるというサプライズで、得体の知れない感じを出したかったんです。空についての説明もほとんど入れないことで、「2001年宇宙の旅」('68年)などが持っているような、言葉で説明できないような未知のものと遭遇するというスパイスを、エンターテインメントの枠の中でやってみようと思ったからです。

――(2)に続く

「サカサマのパテマ」
4月25日(金)発売
Blu-ray限定版 7800円(税抜)
DVD限定版 6800円(税抜)
DVD通常版 4800円(税抜)

【特典内容】
<特典>
・作画監督又賀大介描き下ろし三方背外箱
・特製サウンドトラックCD(25曲 約30分収録 予定)
・豪華ブックレット(涌井 学書き下ろし小説「二人の夢(仮題)」&又賀大介描き下ろし挿絵、スタッフ座談会など)
※ブックレット表紙はキャラクターデザイン茶山隆介描き下ろし
・最後の手紙レプリカ
<映像特典>
・東京国際映画祭舞台挨拶
・初日舞台あいさつ
・キャスト(藤井ゆきよ・岡本信彦)、吉浦監督インタビュー映像
・サカサマな「サカサマのパテマ」(本編シーンを“サカサマ”視点でダイジェスト収録)
・予告編集
<音声特典>
・藤井ゆきよ×岡本信彦らキャストによるオーディオコメンタリー
※DVD限定版はBlu-rayと同一。DVD通常版は映像、音声特典のみ収録。収録内容は変更になる場合あり。

発売:アスミック・エース/KADOKAWA 角川書店
販売:KADOKAWA 角川書店/アスミック・エース

■公式HP
patema.jp/