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アニメ映画「サカサマのパテマ」吉浦康裕監督インタビュー(3)~世界を作り上げるためのスタッフ~

2014/03/31 20:31

その(3)は「サカサマのパテマ」を共に生み出したスタッフたちについての話
その(3)は「サカサマのパテマ」を共に生み出したスタッフたちについての話 (C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013

――逆さまのアングルも多いですが、作画をする上で結構ハードルが高かったのではないでしょうか。

吉浦:幸い自分は「イヴの時間」から引き続き、3DCGで空間を構築して構図を決めるという方法をとっていました。「サカサマのパテマ」もその体制で始めたのですが、逆さまの構図を全て手描きのアニメーターに任せていたら、大変なことになっていたでしょうね。作画監督からも「3DCGがなければ無理でしたね」と言われましたし。そういう意味では僕の手法と「逆さま」という題材がジャストフィットしたんです。

――3DCGで組んだ背景をそのままレイアウトとして使ったのでしょうか。

吉浦:はい。美術監督の金子(雄司)さんがすごく優秀な方で「これぐらいしっかりガイドラインがあるなら、そのまま背景にします」ということで。今回の背景美術は、金子さんの世界観や画力にかなり負っています。

――金子さんの美術のどういうところが魅力なのでしょうか。

吉浦:僕は映画の中で建築をカッコ良く見せたいんですが、そのためには建築の知識に裏付けされた絵でないとダメだろうと考えています。今回は地下世界と地上世界と二つあるので、特に建築物はキーになるだろうと。それで金子さんに地下世界のイメージボードを描いてもらったら、めちゃくちゃ出来が良かったんです(笑)。それで、よろしくお願いいたします、と。

――地下世界と地上世界では建築物も対照的です。

吉浦:地下世界は、巨大な建築物がごちゃごちゃとそのまま都市になっているようなイメージです。一方、地上世界は少しノスタルジーを感じさせる“空想科学漫画映画”の雰囲気が欲しかった。そこで金子さんには、ブラジル・ブラジリアにあるような近代建物が欲しいとオーダーしました。すると金子さんが「ブラジリアを計画した建築家ルシオ・コスタはル・コルビジェの影響を強く受けている。それならコルビジェ自身が手掛けたインドのチャンディーガルを参考にするのはどうだろう」と提案をしてくれたんです。実作業でも、例えば僕が学校の教室の大まかなコンセプトを用意すると、そこに開放感のある窓と、天井が窓の外まで続いているデザインを付け加えて、近代建築らしいディテールを足してくれたりしました。

――キャラクターデザインは「イヴの時間」とはちょっと違う雰囲気になりました。

吉浦:キャラ原案は「イヴの時間」と同じ茶山(隆介)さんにお願いしましたが、今回は冒険活劇なので、シャープでカッチリしているよりは、丸っこくて温かみのある線にしたかったというのがありました。ちょうどアニメーション用のデザインをまとめていただいた作画監督の又賀(大介)さんのオリジナルの絵もそんなテイストなんです。それで「あ、これでいいんじゃないか」と決めました。

――「THE IDOLM@STER」にも関わっているコスチュームデザインの杏仁豆腐さんはどういう経緯で参加されたのでしょうか。

吉浦:パテマの衣装というのがなかなか難産で、茶山さんも苦労されていたんです。それで「ちょっと別の人にお願いしてみようか」と。そうしたら杏仁豆腐さんが、もこもこしているのにかわいい防護服を描いてくださって「あ、これはいいね!」となり、パテマの衣装については杏仁豆腐さんにお願いをすることになりました。

――吉浦監督自身のキャラクターのデザインに対するこだわりというのは、どこがポイントですか。

吉浦:僕は作品ごとに適切なデザインの絵を当てはめることが大事だと思っていいます。今回はパテマというキャラクターがとくに重要で、地下世界にいるんだけどとにかくかわいくて、嫌みがなく、みんなから好かれる人であることが分かるデザインにしたい、と。演出面でも、前半は地下世界ではいかに彼女がみんなから好かれているかっていうことに注力しました。

――今回、光の使い方、それからポイントで入る立体的なカメラワークも非常に印象的でした。

吉浦:僕は、コンポジットといわれる、素材を組み合わせ最終的な完成画面を作る作業を自分自身で行っています。他にもスタッフはいて、手伝ってはもらいますが、映像の方向は完全にこちらで決めています。「サカサマのパテマ」は、光を含め画面に対する“味付け”が多いですね。というのも、金子さんの硬質な美術と、やわらかいキャラクターを一つの画面の中でなじませるために、撮影で情報量を増やしたからです。カメラワークについては「サカサマのパテマ」だからというより、僕自身のロジックで自然とそうなっちゃっているところはあります。古風な雰囲気のあるキャラクターだし、背景も手描きなので全体としては懐かしいテイストがあるにもかかわらず、パース感やカメラワークは3DCGがあるからこそできるものになっていて、このハイブリッド感は非常に新鮮で、やって良かったと思いました。

――(4)に続く

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

「サカサマのパテマ」
4月25日(金)発売
Blu-ray限定版 7800円(税抜)
DVD限定版 6800円(税抜)
DVD通常版 4800円(税抜)

【特典内容】
<特典>
・作画監督又賀大介描き下ろし三方背外箱
・特製サウンドトラックCD(25曲 約30分収録 予定)
・豪華ブックレット(涌井 学書き下ろし小説「二人の夢(仮題)」&又賀大介描き下ろし挿絵、スタッフ座談会など)
※ブックレット表紙はキャラクターデザイン茶山隆介描き下ろし
・最後の手紙レプリカ
<映像特典>
・東京国際映画祭舞台挨拶
・初日舞台挨拶
・キャスト(藤井ゆきよ・岡本信彦)、吉浦監督インタビュー映像
・サカサマな「サカサマのパテマ」(本編シーンを“サカサマ”視点でダイジェスト収録)
・予告編集
<音声特典>
・藤井ゆきよ×岡本信彦らキャストによるオーディオコメンタリー
※DVD限定版はBlu-rayと同一。DVD通常版は映像、音声特典のみ収録。収録内容は変更になる場合あり。

発売:アスミック・エース/KADOKAWA 角川書店
販売:KADOKAWA 角川書店/アスミック・エース

■公式HP
patema.jp/

画像一覧
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  • その(3)は「サカサマのパテマ」を共に生み出したスタッフたちについての話
  • 【画像】背景やキャラクターデザイン、コスチュームデザインについて明かす
  • 4月25日(金)発売Blu-ray/DVD限定版のジャケット
  • 特典のブックレットより
  • 各種特典が満載のBlu-ray/DVD限定版の展開図
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