伊藤沙莉主演映画「タイトル、拒絶」山田佳奈監督インタビュー「葛藤している人間に美しさを感じるんです」
「感情的に判断した瞬間に自分の正義は間違いになる」
――“女性監督”と呼ばれることについて、ご自身ではどう感じていますか?
山田「自主映画を撮っていた時に、理解に苦しむ体験をしたことがあるんですよ。ある映画祭で『審査員に女性がいなかったから、良かったんだけどあなたの作品の気持ちは分からなかった』って言われたんです。『……え!?それ微妙じゃん!!』って(笑)。その時に、映画というフィールドで起こったことだけど、これが社会なんだなって。
女性監督と呼称されることに関していうと、20代の私だったら鳥肌立つほど嫌だったと思うんです。でも今は、そこに都度引っ掛かる必要もないのかな、と感じていますね。それよりも大切なことは、相手の言いたいことによく耳を傾けること。相手を拒絶することではなくて、自分が今から何をしていくかだと思っていますね。
女性は虐げられるべきではないし、男性を喜ばすための存在でもない。何かの栄誉が与えられる場に女性の審査員が入ることも当然だとは思いますが、(社会的な性差の問題について)私自身はニュートラルに判断していきたいと思っています。感情的に判断した瞬間に自分の正義って間違いになるし、悪になる危険性もあると考えています」
――「全裸監督」の脚本・監督を担った内田英治氏が今回プロデュースを務めていますが、内田氏から受けた影響はありますか?
山田「Netflix『全裸監督』は全世界配信で、そこで内田さんとご一緒していましたが、その時私自身はお恥ずかしい限りですが、女性としての価値観や正義を描くことに重きを置いていたのもあって、世界をそこまでリアルに意識できていなかったんです。
一方、『タイトル、拒絶』の時に改めて海外との違いを凄く考えさせられました。日本と海外の女性の違いとか、日本と海外の性風俗の在り方の違い、文化の違いとか。私たち日本人は、自分自身を多く話さなくても相手に伝わりやすいじゃないですか。でも海外では、ちゃんと相手に説明しないと分かってもらえないこともあります。
“日本人である私が、セックスワーカーの人たちを撮る”ということを、説明にならないように海外の人たちに伝えるには何が必要なのか。言葉ではなく“肌感”で映画にフィードしていくということは、内田さんからの影響が大きかったですね」
映画「タイトル、拒絶」
11月13日(金)から新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
出演=伊藤沙莉
恒松祐里、佐津川愛美/片岡礼子/でんでん
森田想、円井わん、行平あい佳、野崎智子、大川原歩
モトーラ世理奈、池田大、田中俊介、般若
監督・脚本=山田佳奈
劇中歌=女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
プロデューサー=内田英治/藤井宏二
キャスティングプロデューサー=伊藤尚哉
企画=DirectorsBox
制作=Libertas
製作=DirectorsBox/Libertas/move/ボダパカ
配給=アークエンタテインメント
映倫区分=R15
公式サイト=http://lifeuntitled.info/
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