「コールドケース3」吉田羊インタビュー 「自分の体の一部」と言い切る役柄を演じきり「このシーズンで終わってしまっても納得できる部分はあるんです」
「今回は有終にふさわしい百合でなければいけないという思いで臨みました」
――今回三度百合を演じることになりましたが、撮影に臨むにあたって意識されたことはありましたか。
吉田:今回台本を読んだ時に、これまでと違う感覚を覚えたんです。それは「終わり」を意識する感覚で。これまでは「次のシリーズもあるんだろうな」と予感して読んでいたんですが、今回はある意味美しいラストで、「もしかして『コールドケース』はこれで終わりなのかな」と感じたんです。
そう考えると、一つ一つのシーンがさらに愛おしくて、有終にふさわしい百合でなければいけないという思いで今回は臨みました。シーズン1からずっと役との境目がわからなくなるくらいのめり込んでいた役だけに、シリーズを重ねながら私と役が一体になって成長してきたところがあります。
加えて、今回最後を意識したからかはわからないですが、結果的に素直で人間らしい百合になったなと感じています。弱さや怒りを見せたり、相手に寄り添いすぎてしまったりという、これまでであれば抑えてきた感情に正直でいられるようになったかなと。それは他でもない、捜査一課の4人とこのチームの皆さんの存在のおかげで。
以前だったら「それはやりすぎだろう」と思えるようなことでも、これまでの積み重ねがあるから成立すると皆さんが信じてくれたおかげでもあるなと思っていて、ある意味このシーズン3で「コールドケース」が終わってしまっても納得できる部分はあるんです。
でも演じ終わってみると、今度は「この先の百合」を演じたいという欲も出てきて。それは捜査一課4人の悲願でもあるので、今は「シーズン4が叶ったらいいな」という夢を持っています。
――その「終わり」を感じたのは、具体的にはどういった部分だったのでしょうか。
吉田:それは最終回の作りですね。百合はずっと孤独な人で、心を開かずに、常に人を疑ってかかるような悲しさを持っている人だったんですが、それが捜査一課の4人と関わっていく中で少しずつ心がほぐれてきて、自分を見せることとか人を許すこととか、何なら人を愛することに対する垣根が少しずつ低くなってきて。
でも、やっぱり彼女の中で「母親との確執」というのが消せない一本の軸としてあったんです。それは百合の孤独の原因でもありますし。それが最終回の妹とのエピソードを通して、「百合が一つ乗り越えられちゃったな」って思ったんです。なので、このシーズン3で終わるのがもしかしたら一番美しいのかなって思います。
「捜査一課のシーンはチーム全員にとっても楽しみだったんです」
――そうした百合の成長は今回のシーズンで重要な要素の一つとなってくると思いますが、容疑者に対する「追い込み」から暴走しがちな高木(永山絢斗)を諌め叱咤する姿は、これまで以上に風格が備わっている印象を受けました。吉田さんからご覧になって、本作における百合のキャラクターに対する印象はいかがですか。
吉田:シーズンを重ねる中で、「百合はこうあるべき」というのが少しずつ取り払われてきていて。犯人や事件の関係者の弱さと向き合う中、合わせ鏡のように自分自身の弱さとも向き合うことになったことで、少しずつ心に余裕が生まれ、その結果、気が付いたら自然と他人に寄り添える人になっていたというところがあるんです。
なので、意識して百合を変えていこうというよりも、自然な形でそういう心持ちにさせられ、それが結果的に百合の成長に見えたということかなと思います。高木への処し方は、今シリーズでは「敢えて、止めずに泳がす」ということもしています(笑)。それも心のゆとりの賜物ですね。
また、このドラマの性質上、どうしても百合は聞き役に回ることが多いんです。なので、より良い「聞き方」と「距離感」のようなものが、シーズンを重ねる中で百合に備わっていった、それに彼女自身が気付いていったのかなと思います。
――台本を拝見していて、百合が率いる神奈川県警捜査一課の面々による気心知れたやり取りは、シリアスな物語が続く中で唯一笑いのあるシーンとなっていました。足掛け5年に及ぶ撮影チームならではの「阿吽の呼吸」などもあったと思いますが、そうした軽口を叩きあうシーンなどは演じられていかがでしたか。
吉田:今回のシリーズは、第1話の冒頭から捜査一課メンバー5人の今の関係性が描かれていて、台本を読んだ時震えるほどうれしかったんです。それこそ軽口を叩き合えるほどに5年かけて絆と信頼関係を深めてきたんだなと感じられましたし、実際撮影現場でも、これまでに増して暖かい空気感がありました。
シーズン1からそうなんですが、捜査一課のシーンはチーム全員にとっても楽しみなシーンでもあるんです。と言うのは、(このシーンは)ワンカットで撮ることも多く、こうしたテンポの良い掛け合いって信頼関係が必要なんです。
そんな中で、カメラマンさんをはじめスタッフの皆さんが「一緒にお芝居をしている」という感覚で撮ってくださるので、出来上がった映像に躍動感が出てくるんです。なので、捜査一課のシーンがこのドラマの要でもあるし、この世界観を作り出しているなと感じています。
――今のお話の中でも現場のチームワークの良さが伺えますが、その中でも今回のシーズン3で一際チームワークの良さを感じられたエピソードを教えてください。
吉田:現場では5人で過ごす時間が今回すごく増えました。スタッフさんもシーズン1からほとんど変わっていませんので、やっぱり勝手知ったる間柄という感じで、リハーサルから演じ手と監督の思いが一致していることが多くて、最初から画がピタリと決まることが多かったですね。
演者は演じる中で自分の「間」というのがあるんですが、演者と同じ間でカメラマンさんがズームで寄ってくれたり、本当に演者と一緒にお芝居をする感覚で撮ってくださって。そういった時は「さすがだな」というか、このメンバーだからこその呼吸が読めているんだなと感じていました。
2020年12月5日(土)スタート
毎週夜10:00-11:00
WOWOWプライムにて放送(※第1話無料放送)
https://www.wowow.co.jp/drama/original/coldcase3/
■「連続ドラマW コールドケース3~真実の扉~」第1話+第2話 見どころ映像