<試写室>「密着!中村屋ファミリー」未曾有の1年でも燃え続ける中村屋スピリッツ
2020年、勘九郎と七之助は3月に明治座の花形歌舞伎、5月には過去5回上演している赤坂大歌舞伎への出演、9月からは恒例の巡業公演が予定されていた。
2月に歌舞伎座の舞台に立っていた勘九郎は当時を「舞台上から客足が遠のいていくのを感じていた」と語る。
3月の花形歌舞伎。「桜姫東文章」の稽古に臨む勘九郎と七之助だったが、初日は延期。延期は1度ではなく数回行われ、最終的には全公演中止という事態に見舞われる。
番組には稽古映像だけでなく、初日の延期、そして公演中止決定の瞬間も収められていた。
出演者たちのリアルなリアクション。
驚きや戸惑いの中、稽古に取り組む役者たちの姿を見ていると、思わず涙が出てしまった。
そんなトラブルの中でも、熱心に勘九郎を指導するのは片岡仁左衛門。
幕が開くのか?と誰もが不安になる中、勘九郎にひたすらに指導を続ける仁左衛門。そして仁左衛門の言葉に真剣に耳を傾け、吸収しようとする勘九郎。
幕が上がる可能性があるのであれば、お客様にはより良いものを見せなくてはならない、という彼らの熱を感じた。
しかし、結果的に花形歌舞伎は開幕することなく公演中止に。
はからずも同番組の映像が唯一の記録となり、「桜姫東文章」の一部を勘九郎の早替わりの裏側と共に見ることができる。