助演女優賞は「エール」二階堂ふみ! 歌唱シーンは「毎回、悔しい思いをしながら」
クランクアップで伝えた「また、ゆっくり話そうね」
――主演男優賞を獲得した窪田正孝さんとの共演はいかがでしたか。
このドラマでは窪田さんが主にいろんな感情の表現や、戦争という歴史的な部分も含めて背負われていました。そのひとつひとつをすごくピュアな気持ちで演じてらっしゃって。1年間、夫婦役ということでご一緒させていただけて、ありがたいことばかりでした。
特に、音と裕一がコミカルなやり取りをする場面はすごく楽しかったです。台本の中に余白がたくさんあるので、いろいろ引き出しを出し合うような瞬間も作れて…。クランクアップのときは、意外と二人とも照れ屋なので、これまでの苦労を熱く語ってみたいなことはなかったんですけど。「また、ゆっくり話そうね」ということは話しましたね。
――監督賞の吉田照幸さんはどんな監督だと思いましたか?
本当に厳しい目を持ってドラマを作られている方なんだなと思いましたし、その厳しさと同じぐらい優しさも持った素晴らしい監督です。吉田監督の現場はそこで生まれることを捉えようとするので自由度も高かったですし、台本以上のものを撮ろうとするエネルギーがありました。
元々コントも作っていらしたので、笑いに対しては厳しくて、キャッキャしながらというよりは、どちらのバージョンの方が面白いかというのを真剣に話し合う感じでした。特に喫茶店バンブーのシーンはそうでしたね。
――二階堂さんにとって「エール」はどんな作品になりましたか。
自分がこの作品に関わりたいと思い、オーディションを受けてつかんだ役でもあったので、きっと今後も俳優業の主軸になっていくと思います。違う現場に行ったときも、「あのときはあんなふうに感じたから、今回はこうやってみようかな」と思うような、そういう場所になる気もしています。ここまでひとつの役を長く演じさせていただくのはぜいたくな経験で、それに必要な役作りの期間もちゃんととっていただきました。
スタッフの皆さんも本当にプロフェッショナルな方々が集まっていて、そういう環境で自分の役を温めていくという経験はなかなかできることではないので…。演じるって本当に幸せなことだなと改めて実感しながら、俳優として今回のように、いろんな方々が見て日常を軽く離れる時間を作れるようになれたらと思います。
(取材・文=小田慶子)