本当に恋愛は難しいです
――繊細な演技が要求される現場だったと思います。
僕が意識したのは“目線”です。木島さんは目を合わせてくれることが少ないので、春彦的には絶対合わせてやるという気持ちで見るというか。目の奥を見てやる!という思いが強いです。目は感情を伝えますから。
あと今回、木島さんと春彦はケンカをしてかなりひどい言葉をぶつけられたりするんですが、逆にそのときの春彦の動揺も感じ取ってもらいたいです。こんなに愛しても伝わらないと分かったときの動揺とかを目の演技で感じ取っていただきたいです。
――ドラマ版では大学生だった春彦も映画版では社会人に。その変化はどのように出していますか?
明確に分かりやすく変えた部分はないのですが、心情やつい出てしまう行動からその変化を伝わるようにしました。やっぱり大学生と社会人の差はすごく大きいと思うんです。特に春彦は広告代理店に就職していますから、恐らく慣れない社会人生活に疲労こんぱいしてるけど、少しだけ世界が広がったはず。
ただ、そのことによって心に余裕がなくなった感じがあって、そこを意識して演じました。余裕がないことで積み重なった愛をぶつけてしまったり、あふれてしまったり、あと言い訳とか見返りを求めがちになったりして…。社会人1年生ならではの余裕のなさ。これが今回の春彦に見られると思います。
――そんな少し成長した春彦と実家に戻った木島とのすれ違いが描かれますが、猪塚さんから見て木島は変化したと思いましたか?
春彦目線で言うと(木島)理生さんは実家に帰って余計にこじらせたなという印象です(笑)。春彦的にもじゃあどうすればいいんだろうと思ってしまうのですが、そこが愛おしかったりするので離れられないんですよ。本当に恋愛は難しいです。
――遠距離恋愛だから余計にすれ違ってしまうところもあったりして。
(木島は)顔を合わせていても言葉にして愛を伝えることはあまりないので、遠距離でそれもデジタル的なことをやらない人なら、そりゃすれ違うだろうなとは思います。
僕自身は、遠距離恋愛の経験はないのですが、このコロナ禍での人と会えないフラストレーションとか辛さとかに少し近いのかな?と考え、演技に取り入れました。やっぱり面と向かうだけで分かることもありますからね。