大江千里のNY音楽ライフエッセイ第3弾刊行！父親との葛藤やコロナワクチン接種まで目の前のリアルをつづる
この本には、僕の音楽に純粋に感動して涙を流すアメリカ人のお客さんと向き合って、それを目の前にして感動する自分がいます。アメリカ人だけじゃなく、イタリア、アルバニア、イギリスと、いろんなところに行き、その場で人と触れ合うことによって、「君は君のままでいい」という自分の持ってる音楽のID(アイデンティティー)にだんだん気付かされていく。
そしてまた、3冊目に書かれている内容は”ing”なんですね。起こっていることを即座に書いている。特に第2章には日々の中で曲が生まれていく様子をリアルにつづっています。
アメリカでジャズのラジオチャートで21位まで上がった『Hmmm』の制作にまつわる話も。レコーディングの直前に亡くなった父親との話も出てくる。実は父に会いに何度も何度も大阪に帰っていたんです。亡くなった翌々日がレコーディングの日でした。
現実にいろんなことが起こって、自分の感情の振れ幅も大きかった。そんな中で大阪とNYとの往復で見えて来た「語らなければいけない」と思った青春のエピソードも書きました。「リインカーネーション」(松任谷由実のコンサート体験を軸に学生時代の出来事をつづった項)とか、母校にリユニオンで帰るコンサートの話とか。『Hmmm』の一枚前に作った『Boys & Girls』は、POPS時代の曲をジャズにアレンジしたもの。過去への巡礼みたいな側面もあります。このアルバムを経て『Hmmm』のSenri Jazzへと心は向かったのです。
――過去を現在とつなげる何か具体的なきっかけがあったのですか?
大江：コンサートツアーを一緒にやり、プライベートでも長いこと付き合いのある振付師の濱田“Peco”美和子(「マルマルモリモリ」とかをやっている人です)が、ニューヨークに遊びに来てくれて。その時に彼女との会話の中で過去への旅が始まりました。
コロナで旅ができなくなった。だけれどもある意味、この本に入っているのは、過去と現在と未来を行ったり来たりしている僕自身の旅なんですよ。第3章のコロナが起こったことによって、僕の音楽の旅はパタっとストップする。でも、人間は想像力の生き物で心の旅というか、自分自身が動けなくてもできるイメージの旅を探すということに心が切り替わっていったんですよね。旅ができない不便を逆手に取ったわけです。
関西学院大学の大学生だった時に行ったユーミンの「リインカーネーションコンサート」で、僕自身がその場に居合わせることにより自分の持つプロ意識を図らずしも認識した、10代の後半の貴重なプロへの入り口というか、僕の音楽人生の発祥地点なんですよね。セロニアス・モンクとかビル・エヴァンスに影響を受けたのと同じくらい、松任谷由実さんの精神性にもらったレア体験はものすごく僕のモノづくりの原点になっています。
「マンハッタンに陽はまた昇る 60歳から始まる青春グラフィティ」
発行：KADOKAWA
定価：1,800円+税
発売日：2021年3月31日(水)
https：//www.kadokawa.co.jp/product/322008000049/
大江千里作・告知動画 https://youtu.be/mFmug-ozBko
◆大江千里出演の特別番組◆
震災10年特別企画「音楽で心をひとつに Music for Tomorrow」
https://thetv.jp/program/0001000185/
2021年3月27日(土)夜11:00‐0:00 NHK総合にて放送
オーダーメイドファクトリー
大江千里『Senri PremiumIII~MY GLORY DAYS 1993-1999』
・大江千里のアルバム『Giant Steps』『SENRI HAPPY』『ROOM802』に未収録シングル 曲を加えたCD‐BOXがリリース。予約受付中(2021年5月18日まで)
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=5612&cd=DYCL000000787
