2021年1~3月放送の連続ドラマを対象にした「第107回 ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」で脚本賞を受賞したのは、「俺の家の話」(TBS系)で脚本を書いた宮藤官九郎。今回で12回目の最多受賞に。「俺の家の話」は作品賞、監督賞、主演男優賞と合わせて4部門を受賞した。受賞インタビュー前編では、能楽とプロレスという異なる題材を組み合わせて描いた裏側や、話題を呼んだ最終話について語ってもらった。
展開に行き詰まることはなかった
――「監獄のお姫さま」(2017年、TBS系)以来の受賞、12回目の最多受賞になります。
ありがとうございます。「俺の家の話」の脚本を書き始めたのは2020年の5月だったので、すごく前のことのような気もします。早めに取り掛かったこともあり、体感としてはあっという間に書き終え、執筆中、展開に悩むとか行き詰まるとかいうこともなく、あまり苦労した記憶がないんですよね。
――審査員や記者からは「プロレスと能楽と介護という全く異なる題材を融合させた」「人間国宝と人間家宝というような伏線回収がすごい」と評価がたいへん高かったです。
父親の寿三郎(西田敏行)が人間国宝で、息子の寿一(長瀬智也)が人間家宝というのは、途中で思い付きました。もし、最初に思い付いていたら恥ずかしくなって止めていたと思います。寿一が「これが、俺のいない、俺の家の話だ」と言う最終話の展開も、最初から決めていたけれど、その後、長瀬くんの退所が発表され、ちょっとどうなんでしょうという話になり、「他の結末を思いついたら変えてもいいですか」と言ったものの、結局思い付かずにあのラストになりました。長瀬くんが「予定通りでいいんじゃない」と言ってくれたのも大きかったですね。
――その結末は衝撃的でしたが、どうしてあのラストにしたのでしょうか。
「それまで家のことをしてこなかった長男が、お父さんが倒れたから慌てていろいろやったんだけど、結果的にそれが自分の(葬式の)準備になっちゃった」という話にしたかったんじゃないですか。ただ、そう発想した時点で、プロレスを題材にすることは決まっていたけれど、能楽は決めていませんでした。でも、こうして時間が経ってみると、能の世界観がドラマの展開にハマったので、能にして良かったなとつくづく思いますね。
TCエンタテインメント
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