今作で「自分の癖が改めてはっきりした」
――第9話の夫が育休を取ってうれしいユカと、夫が働かず家にいることに拒否反応があり「今の時代には合っているんだろうけど私には無理」と言うさくら。実際にママ友同士が交わすようなリアルな会話でした。
あの場面は反応が怖かったんですよね。「ドラマで言うことではないのかな」とも思って。でも、育児休暇を取る人もそうでない人も両方いるだろうし、それでいいんじゃないかと。世の中の意見が一方ばかりに傾いていると息苦しくなるんです。そういう気持ちを戸田さんに言ってもらうのなら許してもらえるかなと考えました。
――宮藤さんにとって、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019年、NHK総合ほか)後の民放連続ドラマ復帰作でしたが、今回、達成したことはありますか。
(これまでも組んできた)磯山晶プロデューサーに「とにかく時系列をいじるな」と口をすっぱくして言われていたんですね。「劇中の時間軸を変えることによって、テレビの前のお客さんが離れていくから」と(笑)。
これまでは自分の気持ちのままに書く場合、どうしても過去現在未来を行ったり来たりしないと思ったように出来なかったけれど、今回は時の流れを守れました。時系列を入れ替えなくても自分の持ち味で書けるんだということは達成できたんじゃないかな。
――介護も絡め、家族のドラマをシリアスに描いたのも新しい挑戦だったのでは。
もっと欲の支配する家族の愛憎劇にしようと思えばできるのに、それはなんか嫌だなという感覚がありました。リアリティーを感じなかったんです。「俺の家の話」がこういうドラマになったことで、自分の癖が改めてはっきりした。変えたいのに変わらない部分と、変わんなくて良かった部分。このドラマを終えて、その両方が見えた気がします。
(取材・文=小田慶子)
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