「魔改造の夜」を盛り上げる“夜”の要素
「魔改造の夜」を盛り上げるもう1つの要素は、「夜」にある。
この企画、「エンジニアが己の技術で戦う」だけを取り出すと、ただのロボコンになってしまうのだ。「魔改造の夜」の舞台は、深夜の廃倉庫。照明は最小限で、画面の大部分は暗がり。行われるのは「魔改造クラブによる宴」であり「ここで見たことは他言無用」なのだ。
お題は魔改造クラブの主催者(声のみ)から発表され、魔改造の対象は「いけにえ」と呼ばれる。いけにえを提供する勇気あるメーカーの人も登場し、「悩みましたが……」と心境を語ってくれる。魔改造したマシンは、悪魔であり、モンスターだ。
こうした徹底した重々しい設定が「いけないことをしている」という気分を無駄に盛り上げる。設定が作る「闇」と、エンジニアが本気で取り組む「光」のギャップが大きければ大きいほど、そこに巨大な影ができ、モンスターたちが生き生きと暴れ回ることができる。
その「影」の効力が最も発揮されるのが、動物がモデルになったお題だろう。過去、ヨチヨチ歩く犬のオモチャを魔改造した「ワンちゃん25m走」では、自動車メーカーT社が生み出したモンスターに会場がどよめいた。試作用にもらったワンチャン4匹の首を全てくくりつけ、グロテスクなフォルムになっていたのだ。開発者の「4匹みんなを走らせてあげたかった」というあどけないコメントは、完全にマッドサイエンティストの発言であった(8月27日にNHK総合で再放送があるので、ぜひその姿をお確かめてほしい)。
そして、その人形お題が今回の第3弾でもあったのだ。「赤ちゃん人形 綱登り」である。