吉沢亮「憧れや尊敬の気持ちが栄一と慶喜の関係性に自然と出ていれば」
――今後、栄一はどのように変化していくのでしょうか。
これまでは、自分が正しいと思う事を全力でやってきて、相手がどれだけ目上の人であろうと、自分が正しいと思った道を突き進んできました。
ですが、大人になって新政府で働くようになり、正しいと思っていることに突き進むという意味では同じなのですが、そこへの手段が栄一の道理からは少し外れたようなことや、何かを切り捨てるようなことを致し方なくやる姿がこの先描かれていきます。
葛藤も抱えていますし、何か間違えているというのも薄っすら、自分を俯瞰で見たときには気づいているのですが、でも止められないと言いますか。
自分のやることに余裕がなくなってきているのかなという感じです。大人になるってこういうことなのかと、 “汚さ”のようなものが感じられるように、意識しながら演じています。
また、これまでは栄一と相手の1対1のバトルだったものが、栄一自身が偉くなっていくことにより、栄一対その相手プラス大衆という、“第三の目”みたいなものが増えてきます。
栄一のことを「ヒーローだ」という人もいれば、「いや理想を語っているだけのやつだ」という人もいて、自分のやっていることと周りからの見られ方の違いも生まれてきます。
そうなることで、栄一の人物像がより人間らしく、生々しく、なっていくのかなという気がしていて、演じていて楽しいです。
今まではとにかくキラキラした若者という印象だったのですが、この先は何かを切り捨てるなど、ダークな面を見せつつ、自分の希望や自分の道に生涯向かい続ける栄一に注目していただきたいです。
――時代が明治へと移り変わっても、栄一と慶喜の交流は続いていきます。栄一にとって慶喜はどのような存在でしょうか。
慶喜が将軍になる前も、なってからも、ずっと尊敬していて、そして将軍という任からはずされても、やはり尊敬しています。
栄一がどんどん偉くなって、上に立つ存在になっても、何度も静岡に挨拶に行きますし、栄一と慶喜の関係性は立場が違っても変わらないんだろうなと思います。
これまで作品全体を通して、栄一と慶喜の二人を軸として描いてきたので、二人の関係性は大きなテーマだと思います。
栄一と喜作(高良健吾)、慶喜と円四郎(堤真一)のように、「青天を衝け」では“二人”の関係性を描いていますが、栄一と慶喜の関係性は今後も色濃く残っていくのではないでしょうか。
――慶喜を演じる草なぎ剛さんの印象はいかがでしょうか。
僕が小学生の頃から拝見してきた大スターなので。少し違うかもしれませんが、栄一が慶喜に向けている尊敬と、僕が草なぎさんに感じている尊敬はリンクしている部分もあるのではないかと思います。
役者としてのたくさんの作品を拝見させていただき、共演する前からすごい方だなという印象です。
草なぎさんへの憧れは、今一緒にお芝居をしていても感じています。その憧れや尊敬の気持ちが栄一と慶喜の関係性に自然と出ていればいいなと思いながら演じています。
――これまで、栄一に大きな影響を与えた人物として円四郎が挙げられると思います。栄一にとってどのような存在だったのでしょうか。
円四郎は、栄一が抱いていた“お武家様”のイメージとは真逆で、栄一が理想としていた“お武家様”だったと思います。とても尊敬していました。
なので、円四郎が亡くなった後もその魂を引き継ぐように、演じる際は円四郎の江戸っ子口調の話し方がうつっているような、少し強めの口調になるよう意識しました。