ヒロインのお母さんだってヒロインだ
鈴木京香が演じる役は確たる自分のライフビジョンをもって生きるたくましい人物が多く、「モネ」でも娘の理解者という役割にとどまらず、母親だってまだまだこれからのビジョンを描いていいのだという希望をもたらすようなところがある。
義母の後を継いで民宿をやる夢も持つ亜哉子。一時期義母の介護に専念していたがそれを苦にすることもなく、それによって自分のやりたいことができなくなったとは決して思わない。その時、その時の最善を選択する精神の爽やかさは、亜哉子こそ“ヒロイン”という感じすらしてしまうほどである。
「モネ」の第30回で、夫・耕治との馴れ初めが描かれたとき、彼には忘れられない人がいると振られても諦めず追いかけ続けた亜哉子。
そして耕治が影のない自分には芸術ができないのではないかと悩むと「正しくて、明るくて、ポジティブで前向きであることが魅力にならない世界なんてくそです」と励ます。
このセリフは名言だった。「影が魅力」「不幸が色気」という先入観を「安っぽい価値観」と一刀両断にする亜哉子の自身の価値観を大事にする生き方は、ドラマの救いになっている。鈴木京香だからこそ、ここまでかっこいいキャラクターになったのだろう。