――松井さんにとって、映画単独初主演である今作の印象は?
映画では初めての単独主演ということで、そういうポジションを任せていただいて本当にありがたいなと思いました。
プロットを読んだ時の印象は家族の物語だなと。姉妹の関係も含めて、失われてしまった時間をどうやったら自分の中で修復していけるのか。自分自身の過去や家族と向き合うお話に興味を抱きました。
――今回演じた麻奈美は、どんな女性ですか?
思っていることを内側に秘めていて、自分自身と向き合うことを諦めているというか、目を背けて生きてきた女性なのかなと思いました。どこか他人に甘えている部分があるのかもしれません。
――共感できる部分はありますか?
自分と似ているところや共感できるところを探すというよりは、麻奈美自身が何を考えているのかということが大事なような気がしました。監督からは「感情表現を抑えてほしい」と言われて。ずっと抑えていることによって、内に秘めている思いがあふれ出してくるような部分を大切に演じていました。
――前田聖来監督から、いろいろアドバイスがあったんですね。
撮影に入る前、何回か台本についてお話をする機会がありました。麻奈美を演じる上で疑問に感じたことや感情の流れとして引っ掛かりがある部分など、どうすれば作品全体がよりよくなるのかを監督やスタッフの方たちと考える時間があったことはよかったなと思います。
――麻奈美を演じる上で苦労した点は?
麻奈美は腹が立ってもうれしいことがあっても、全部感情を抑えてその思いが顔に出てこないんです。ぶっきらぼうな感じを出すというお芝居が、最初の頃は全然慣れなくて難しかったです。
――セリフの言い回しにも工夫を?
相手への言葉の届け方が普段とは違うのかなと思いました。ある意味、相手をぞんざいに扱うというか、ぶっきらぼうな言い方が成立するということは、しっかりと人間関係が構築されていないとできないような気がします。そこに信頼関係があるからこそ、そういう接し方ができるのかなと。お芝居として表現することに苦労しましたけど、やりがいのある役でした。
――ぶっきらぼうな感じという点では、しゅはまはるみさんが演じた麻奈美の母・京子との親子のやりとりに表れていたような気がします。
監督から「この親子は似ている」と言われて、確かにそうだなと思う部分がありました。ぎくしゃくしているように見えながらも芯の部分ではつながっている。お互いに言葉がなくても心が通じているんですよね。本当はうれしいのにそれをうまく表に出せなかったりして。本人たちは大変でしょうけど、客観的に見るとほほ笑ましい関係性。そういう2人の不器用なところが好きです。
――筧美和子さんが演じた麻奈美の妹・尚は物語のキーパーソン!
尚は画面に映っていなくてもずっと存在していて、麻奈美を演じる上で常に意識していました。筧さんとお会いできたのは撮影が半分ほど進んだ頃。先に尚が亡くなったシーンを撮っていたということもあって、本当にいなくなってしまった人に会えたような不思議な気持ちになりました。
――筧さんの印象は?
柔らかい雰囲気の方で、ずっとかわいいなと思いながら見ていました。そんなにたくさんお話をする機会はありませんでしたけど、麻奈美と尚として特別な時間を過ごすことができたような気がします。
下に続きます
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