テレビ作りの環境が窮屈になったと言われても、「そうかぁ?」という感じです(笑)
――具体的にはどういった点に気をつけているのでしょうか?
「例えば、テレビってやっぱり映像で惹き付けて伝えていくものだから、構成の打ち合わせをしているときも“ここには何の画(え)が入るか”ということを常に考えるようにしています。情報番組のVTRの構成を作るときって、どうしても情報をどう整理するかばかりに気を取られて、このナレーションのときに画面に何が映っているのか、ということを忘れがちなんですよ。気がついたら『これは読書か?』というような台本になっている(笑)。近年は情報番組を担当することが多いので、その辺はますます考えるようになりましたね」
――そういえば山名さんは、10年ほど前、放送作家の高須光聖さんと対談されたとき、「テレビは“商品”である」とおっしゃっていました。
「その考えは変わってないです。作品ではなく商品。商品って、自分ではいいモノを作ったと思っていても、ホコリをかぶってたら意味がない。テレビ番組も同じ。やはり多くの人に楽しんでもらわないと。かと言って、売らんがためにどんな手を使ってもいいかというと、もちろんそういうわけではなくて。自分の中で『これはやってはダメ』というような線引きはいろいろありますね」
──“今のテレビは自由度がなくなって窮屈になっている”と嘆いているテレビマンの方々も多いようですが、山名さんは、そういう閉塞感を感じることはありますか?
「世間ではそんなふうに言われてますけど、バラエティー番組の制作に携わる者としては、『そうかぁ?』という感じです(笑)。確かに、情報の正確さや信憑性は以前より求められるようになっているので、そこは物理的に大変だと思いますけど。でも、それだって、昔があまりにもぞんざいだったから、そう感じるだけなのかもしれないし(笑)。
テレビの作り方やルールは時代ごとに変わるから、それを窮屈に感じる人もいるかもしれないけど、その分、新しくできた手法もあるし、今だからできる作り方もあると思うんです。そういう意味では、昔と今ではプラスマイナスとんとん。ドローンで撮ったすごい映像なんて、10年前はあり得なかったじゃないですか。VTRの編集だって、パソコンを使って自宅でもできるようになったから、かなり楽になった。でも、昔よりも高い精度を求められるようになっているから、実は作業時間そのものはあまり変わらなかったりするわけで、これもある意味、プラマイとんとん。演者にしても、今の時代ならではのタレントさんがたくさんいる。僕は、ある時期『ザ! 鉄腕! DASH!!』(日本テレビ系)に参加していたんですけど、一昔前なら、男性アイドルが農作業や大工仕事をするなんてあり得なかった。
つまり、番組づくりの技術にしろ、人材にしろ、その時代時代で新しいものが生まれている。昔と比べたら窮屈なところもあるかもしれないけど、別の部分が広がっているんです。窮屈だと嘆いている人たちは、その広がりに目を向けられていないだけなんだと思います。テレビを取り巻く状況って、1年も経てば様変わりしてしまいますから、僕ら作り手も、時代にどう対応していくかが一番大切なんじゃないかと。これまでのような“娯楽の王様”というテレビのあり方は変わっていくんだろうけど、可能性はまだまだあると思います」