コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、芦花公園さんによる小説『異端の祝祭』(角川ホラー文庫)のコミカライズ作品『異端の祝祭』(現在「ComicWalker」で連載中)。同作は、普通の人間には見えない“あるモノ”が見えてしまう特殊体質の女子大生が主人公のホラー作品で、今回コミカライズで漫画を担当したのは五十嵐文太さん。連載開始に際して、プロローグとして0話をTwitterで公開したところ、4月14日時点で5万を超える「いいね!」が寄せられた。この記事では作者の五十嵐文太さんにインタビューし、作品へのこだわりなどを伺った。
手に絡みつく人毛。振り返った女子高生がみたものとは
主人公の島本笑美は自身の持つある“特殊体質”のせいで人と話すのが苦手になってしまった女子大生。現在は就職活動中だが、面接でも上手く自分をアピールすることができずに落ち込んでいた。面接の帰り道でも、電車の中で談笑する女子高生3人組を見て、自分と違って悩みなんてないんだろうなと、うらやましく感じてしまうのだった。
電車を降りる際、女子高生が何かを落としてしまう。笑美はキーチャームか何かだと思い、それを拾って渡そうとする。しかし女子高生は笑美が持っているモノをみて絶句し、受け取らずに逃げて行ってしまう。怪訝に思い、拾ったモノを確認すると、なんとそれは真っ黒な人の髪の毛だった。手に絡みついた長い人毛に驚く笑美が振り向くとそこには…。
“死んでいる人間”が見えてしまうせいでうまくこの世の人と関わることができない女子大生の姿を描いた本作。背筋の凍るような展開と作画にTwitterでは「引き込まれて一気見でした」「『うおっ!』って声出ました。」「すごく続きが気になる」などの多くの感想が寄せられている。
「ちゃんと怖いマンガにしたい」五十嵐文太さんが考える“怖がらせる手法”
ーー『異端の祝祭』のコミカライズをご担当されることになった経緯をお教えください。
いくつかオリジナルのホラー漫画をSNSに投稿していたところ出版社さんより「何かやりましょう」と声をかけていただいたのがはじまりでした。丁度その頃、芦花公園さんの『ほねがらみ』を読んでTwitterで触れたことがあって(こちらもとても素敵な作品)、それを見た編集さんから『異端の祝祭』を紹介されて「コミカライズやってみませんか」とご提案いただきました。実際に読んでみてとても面白かったですし、何よりキャラクターや光景がすんなりとイメージできたので「描けるかもしれない」と感じました。商業で漫画を描く、しかも連載ということで、全てが初めての経験だったんですが、挑戦させていただこうと決めました。
ーー本作を漫画として描くうえで、こだわっている部分や気をつけていることがあればお教えください。
ホラー作品なので、何よりもまず怖くないといけないと思っています。昔からホラー全般大好物で、映画・小説・漫画・ゲームなど数多くの作品に触れてきましたが、それらの経験を生かして本作を「ちゃんと怖い」漫画にしたいです。それが肝であると同時に一番難しい点だと思っています。その上で、本作独特の民俗や宗教が絡むあの怪しい雰囲気と謎解きの緊張感を漫画でも再現できたらいいなと思っています。
ーー本作のコミカライズにあたって、原作者・芦花公園さんよりリクエストなどはありましたか?
企画が決まり、まずはキャラクターデザインから芦花さんとやり取りを始めさせていただきましたが、もう本当にすごく自由にやらせていただいていると思います。すごくありがたいです。リクエストというよりは、作中で語られていないキャラクターの背景や外見イメージなどを共有していただき、漫画にフィードバックしている感じです。
ーー本作を描く際に苦労したことや制作秘話、裏話などがあればお教えください。
本作というよりホラー一般の話になりますが、文章ベースの表現と、絵や映像を使う表現では「怖がらせる手法」がかなり異なっていると思います。音の有無でも違ってきます。同じシーン・内容でも小説だと怖いけど漫画や映画では怖くない(またはその逆)ということはよくありますし、そもそも「文字だからこそ成り立つ演出」とか「画があるからできる表現」というのもあります。うまく説明できないですが、鑑賞者が怖いと思うポイントやメカニズムが媒体によって少しずつ違っているような感覚を持っています。その中で、原作の雰囲気や良さをできるだけ出しながら、漫画ならどういう表現ができるか、ということを考えています。
ーー五十嵐さんは過去にも実体験をベースにしたホラー漫画をTwitterで発表されていますが、「ホラー」に対しての特別な思い入れはありますか。
Twitterでよく「霊感があるんですか」とか「オカルトを信じますか」といった質問をいただくんですが、実は僕自身は唯物一元論者でオカルト否定派です。大学で物理学を専攻していたこともあり、論理的に考えてそう帰結するのが最もしっくりくるからです。一方で、物心ついたころから「気のせい」ではすませられない不思議な体験が数多くあるのも紛れもない事実です。そのギャップがどこから来るのかに強い興味を持っています。僕にとって「ホラー」や「オカルト」とは、理性的には否定しつつも、直観や体感のレベルで「何かあるのでは」と感じている、その狭間で揺れ動いてとても落ち着かない、そういうものです。
ーー最後に、『異端の祝祭』原作ファンやコミカライズを楽しみにしている方にメッセージがあれば、お願いいたします。
一人の原作ファンとして、コミカライズもよい作品にしたいと思っています。自分の作ったものが多くの人に見てもらえること自体が幸せですし、さらに読んだ感想や応援のメッセージをいただけるのは本当にうれしいです。自分自身がよいと思えるものを全力で描きたいと思います。がんばります。
原作:芦花公園
漫画:五十嵐文太
ComicWalker:https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CW01202893010000_68/
■Twitter:文太(@bunta_50)