「ゴッドタン」(テレビ東京系)などを手掛けるプロデューサーの佐久間宣行氏が、仕事論をつづった著書「佐久間宣行のずるい仕事術」(ダイヤモンド社)を出版した。本の中では「30代に入ったくらいから、会社から離れても生きて行けるように自分をブランド化しようと考えてきた」と書いており、その理由を「やりたくない仕事が回ってくることを避けたかった」と語る。また佐久間氏は、会社の中で自分の好きなことをするために「自分が勝てる指標を持ってきて勝負した」と述べ、「ほとんどのテレビマンが大きな評価を得たくて、ゴールデン帯の番組を手掛けたいと思うものですが、僕は向いてないし全然興味がなかった」と明かした。
ビジネス書は「実はあまり読んでいない」自著は“バリバリの理論派”
――はじめに「仕事論」についての本を出さないかとオファーをもらった時、率直にどう思いましたか。
ちょうどいいなと思いました。というのもここ数年、僕のインスタグラムに、学生さんや若い社会人の方から仕事に関する悩み相談のDMがたくさん来ていて、返信していくうちに自分の中で考えが整理されていったんです。また同時期に、他局や広告代理店などを対象に企画術・クリエイティブについての講演をやる機会が増え、話すネタが溜まってきたりもしていて。で、最近あまりにも仕事の悩み相談のDMが来るので、出版のオファーをいただいた時に「本を出せばこの人たちの悩みに応えられるな」と思い、本を出させていただくことにしました。
――佐久間さんのラジオなど拝聴している限り、あまりビジネス関連のお話をされないので、こういった著書を出されたことは意外でした。
そうですね。世のビジネス書の多くは僕の肌に合わず、実はあまり読んでいないんです。断定的に書かれ、最終的には精神論…みたいな内容が苦手でして。そういった意味で今回の本はバリバリの理論派。僕が仕事の中でやっている「仮説を立て、検証する」という流れを実際の体験をもとに書いています。とはいえ最終的には「メンタルを大事にしたほうがいい」とも書いていて、一番言いたいことは実はそこだったりもするのですが。
“自分をブランド化”することで「やりたくない仕事を避けたかった」
――本の中では「30代に入ったくらいから、会社から離れても生きて行けるように自分をブランド化しようと考えてきた」とも書かれていました。そう思った理由は何ですか。
それは20代の後半ぐらいからずっと思っていました。極端な話、自分のキャラクターと信用がないと、簡単に異動させられちゃうというか、取り替えの利く人材になっちゃう気がしたんです。要するに、やりたくない仕事が回ってくることを避けたかった。じゃあ、取り替えが利かない人間って何なんだろうと考えたときに、一つのジャンルのスペシャリストになって、会社にベネフィットをたくさん生む人材だという結論に至ったんです。
もう一つは、「ちょっと言いづらいやつ」になろうとも思いました。そのためにベタベタした飲み会に一切行かないようにしましたし、会社の先輩はもちろん、事務所の方やタレントさんにもおごってもらったこともほとんどないんですよね。
――現在、多くのスタッフ、関係者と日々関わっているわけですが、たくさんの人と手を組み、仕事をする上で意識していることは何でしょうか。
僕だけが得している状態にならないようにしています。そのことに気づいてから色んな人と一緒に働けるようになりました。あとは、明確に自分の強みが何か提示できるようにすることも大きかったです。20代後半の頃、自分の作った企画には自信がありましたが、企画って不安定なものなので、やってみるまで面白いかどうかわからないことが多いんですよ。
今回の「トークサバイバー！」もそうで、僕にはめちゃくちゃ面白くなることが見えていたんですけど、現場はキョトンとしている人がたくさんいて「トークだけのほうが良くないですか？」みたいな空気で。わかってもらえないんですよ、面白さって。「面白さ」が一番不安定なものだから。
――そういった苦労があるんですね。
はい。それこそ、若い頃は「この企画の面白さがわからないのかよ」って不満に感じることもありましたが、そもそも、わかってくれる人自体が少ない。そのことを理解した上で、「編集が得意」「佐久間の現場はすべらない」と周りから思ってもらえるように努力した結果、一緒に仕事をしてくれる人が増えました。
