真彩「オーディオドラマを通して、とても鍛えられました」
真彩:藤井さんはすごくミュージカルがお好きだと思うのですが、実は私、結構藤井さんと観劇する回が被ることがあるんですよ(笑)
藤井:……。えええええ!?
真彩:(笑)。ご挨拶したいなと思うのですが、ご時世的にも難しくて…。「イントゥザウッズ」も同じ回でしたよ!というのは置いておいて…(笑)。
先ほどもお話されていましたが、私はオーディオドラマのお仕事で驚いたのは、本読みをしてすぐに収録するということ。もう始まっちゃうの!?と思っていたら、隣で(石川)禅さんがものすごくいい声出し始められて(笑)。
舞台だとお稽古をしていく中で自分のお芝居や歌に対して、もちろん100点以上を目指すことを前提に、お金を払ってくださっているお客様に失礼のないように、ある程度の平均点は常に保っていたいと思っていて。そのためにお稽古場で繰り返し練習して、自分の耳から聞こえてくる音や録音して聞いてみてどんどん改善をしていって。そういった試行錯誤を経てから一発勝負である舞台に向かっていたんです。だからオーディオドラマを通して、とても鍛えられました。自分の今発している声で演技は成立しているの?大丈夫なの?って不安で。やっぱり「1848」の最初の1~3話くらいはすごく緊張している声だったんですけど(笑)、でもそれもありなのかなって。
私はオーディオドラマに挑戦をした後に「ドン・ジュアン」と「笑う男The Eternal Love -永遠の愛-」という作品に出演をしましたが、その時にはせりふをこう言おうとか、こう演じようって考えなくなったんです。今までは作り込みすぎていたというか、宝塚という世界では自然体でいすぎるとバランスが悪くなってしまう。でもオーディオドラマをやったときに「作った自分ではなくてその役としていよう」と感じることができたんです。
だからその後のお芝居では、その場で感じたことを口にするのが怖くなくなりました。「1848」でも感情が高ぶるシーンがありましたが、何も恐れずに相手から受けた時に思ったことをそのまま声に乗せて出してみようと。すごく勉強になりました。
藤井:いや、これはとてもうれしいですね。オーディオドラマにご参加いただいた方に、現場でどう思っていらっしゃったかフィードバックをいただける機会というのはなかなかないので…。「ジャズのセッションのようで楽しかった!また出たい!」と言っていただけるような場を目指して、この録り方で十二分に力を発揮してもらえると確信できる方をお招きしています。事前に「録るときは信じられないようなスピード感なので…」とガイダンスを申し上げているつもりではあるのですが、真彩さんは退団されてすぐでしたし、いきなり座長さんでしたしね。そのあたりのケアが足りなかったかなと。千尋の谷から突き落したら這い上がってきてタフになりました…みたいな感じになってしまって…。
真彩:いやいやいや!それがよかったんです!でもタフにはなりましたね(笑) 。
藤井:それは意図したことではなくて怪我の功名って感じですかね、真彩希帆の力です。
真彩:「1848」の時はNHKの食堂で収録の合間にラーメンを完食できなかったのですが、先日の「青髭公の五番目の花嫁」の時には食べられたんです(笑)。ただの体調の変化かもしれないですが…(笑)。何かに手を抜いているというわけではありませんが、人間って新しい場所に行くのってとても勇気がいるじゃないですか。うまいこと言っちゃうとそれが“青春アドベンチャー”だったってことですね!!
藤井:(無言で微笑む)
担当者・スタッフ:よっ!
真彩:全然うまくないかもしれないけど(笑)、とてもアドベンチャーでした!ベテランの方とご一緒して、自分以外の収録も聞いて皆さんどんな声でお芝居されているんだろうって思って。ありがたいことに声を褒めていただくことも多いのですが、果たして自分の声は本当に使えるものなのか、作り上げた声を評価していただいているから…と思っていたのですが、オーディオドラマでも褒めていただくことも多く、声の出し方、そして役の幅も広げることもできて、とても感謝しています。