藤井「聞いて想像して楽しむエンターテインメントが広がるきっかけになると非常にうれしいです」
真彩:2022年の11月には並木陽先生が書かれた小説で、オーディオドラマでも放送された「斜陽の国のルスダン」が宝塚で上演されますよね。私は先ほどからお話している通りオーディオドラマから得たものがたくさんあって、だからオーディオドラマでやった作品が舞台になるって聞いてとてもうれしかったんです!オーディオドラマをミュージカルで観たい!って方も多いですし、キャストの皆さんの声だけで想像していたものが踊りあり、歌ありになるってとても楽しみで…。藤井さんもミュージカルになると聞いたときはうれしかったですか?
藤井:より細かく言うと並木さんの小説をNHKで2017年にオーディオドラマ化をしていて、その同じ原作小説を宝塚で上演するということなのですが、きっかけとしてNHKオーディオドラマでやっていたということを演出家の生田大和先生が意識してくださって。舞台ならではの表現で花咲かせてくださるのがものすごく楽しみです。 宝塚歌劇とNHKのオーディオドラマは似たポジションにあるというか、親和性があると感じているんです。歴史も長くてありとあらゆることを常時やっている。題材を探そうと思って大型書店の棚を端から端まで見るという日々を送ってきた中で、帯を見ていると宝塚歌劇で舞台化!というものが多くて、「こんな作品もやっているのか!」とちょっと森の中でさまよっていたら友と出会ったみたいな気持ちになったりしていました。そして今回は真彩さんのご縁でまたつながりを…。
真彩:そうなんですね。生田先生はもともと子供の頃からオーディオドラマがお好きだったそうで、「1848」も聞いてくださっていたんです。私がちょうど「ドン・ジュアン」のお稽古中だったのでオーディオドラマのことを話したりしていたのですが、生田先生が藤井さんにぜひ感想をお伝えしたいと言っていて。
藤井:確かNHKのフォームに1度送ってくださったけど、文字数オーバーで届かなかったとか。
真彩:そうだったんですね(笑)。藤井さんは宝塚もお好きだし、私の退団公演で生田先生が担当された「シルクロード~盗賊と宝石~」もご覧になったって聞いていたから、よかったら繋げましょうか?ということになりまして。そこからこういったご縁が広がったのはとてもうれしいです!
藤井:大人になって作・演出家になられたのも幼い頃オーディオドラマを聞いていたことがベースにあるかもしれないということを伺ったり。まだお目にかかったことがないのですが、お電話をいただくと本当に映像で拝見したことのある生田先生のままで…。口調はそのまま、単位時間あたりの情報量の多いこと!お話がバーっと入ってくるので、こちらもリラックスできて前からの知り合いのノリでお話してしまいます。
真彩:なんだか想像できます(笑)。上演が本当に楽しみです!今回はオーディオドラマでやった作品が宝塚で舞台化されますが、オーディオドラマから広がったらいいな、みたいな夢はありますか?
藤井:ラジオは絶対に音じゃないとできない世界を追求するもの。それがある種プロトタイプとなり、別のジャンルのクリエイターを刺激してまた違う命をもらう…。それも展開としてすごく楽しみですし、今は朗読劇のような形式の舞台も盛んになってきていますよね。衣装を着ての公演もありますが、朗読という想像力に訴えて楽しむものをわざわざ劇場で上演して、お客さんが集まる…。想像力を高めて楽しむという点では、オーディオドラマとすごく近い世界だなと思っています。オーディオドラマが、聞いて想像して楽しむエンターテインメントが広がるきっかけになると非常にうれしいです。