泣きの演技をはじめ、秀逸な感情表現
仲野の感情表現は秀逸だ。特に泣きの演技。「拾われた男」第2話では、事務所のワークショップで演技指導される場面が2ヶ所あった。初めは「ウケるかなと思て」という演技だったが、失恋のあとでのワークショップでは泣きの演技に「うそがねぇよ、その涙」と講師に褒められた。ただ、これはまだ本領発揮ではない。
2021年4月期の菅田将暉主演ドラマ「コントが始まる」(日本テレビ系)では、菅田や神木隆之介と売れないトリオ芸人の役柄だった。
彼らは10年経っても売れなかったら解散という約束があり、それが現実に迫った第1話のラーメン店での場面で、仲野は笑顔から感情があふれ出して泣いてしまう迫真の演技を見せた。第6話でも恋人との関係に揺れたあとの男泣きが話題に。
また、主人公の幼なじみを演じた、2021年7月期のドラマ「#家族募集します」(TBS系)でも号泣シーンが視聴者の涙腺を刺激した。
泣きの演技の中でも、涙が頬を一筋つたうものから顔をくしゃくしゃにして泣くものまで、さまざまなパターンを披露。コメディでも、シリアスでも、その人となりをフッと表に出す。キャラクターの心情に寄り添っているからこその表現で、リアルに伝わってくる。
ふり幅のある演技で魅了する
2006年、13歳のときにテレビドラマデビューした仲野。以来、ドラマや映画にコンスタントに出続け、出演作は多数だが、多くの人々に認知されたのは2016年4月期のドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)あたりだろう。
同作で仲野は、メインキャストの後輩で、“ゆとりモンスター”といわれる強烈なキャラクターを演じ、のちに彼を主人公にしたスピンオフドラマが制作されるほどの反響となった。
2018年10月期のドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)でも、主人公のライバルで“おバカ”なツッパリを好演。
そんな個性的な役どころばかりでなく、2020年10月期のラブストーリードラマ「この恋あたためますか」では、ヒロインに恋をするパティシエで、当て馬的な役どころながら、愛称の“まこっちゃん”が世界トレンドトップ10にランクインするほどに、視聴者をキュンとさせる演技を見せた。
主演映画「泣く子はいねぇが」(2020年)ではダメ男の哀愁を感じさせ、映画「すばらしき世界」(2021年)では元殺人犯の主人公を取材する青年役で第45回日本アカデミー賞の優秀助演男優賞に輝く評価を得ている。
近年の出演作をざっと振り返っただけでも、その役どころの幅広さに驚く。しかも、どれもが強く印象に残る演技で魅了しているのだ。脇を固める一員としても、その世界観に溶け込む空気感をまといつつ、物語の大切な存在としてグッと引き締める。