「自分だけが面白いと思っている」と思える本との出合いを
ーー本を読むのが苦手な人へのアドバイスをお願いします。
本を好きになるためには、自分が面白く読める本との「出合い」が必要だと思っているのですが、半分運のようなもので、あとは数を打っていくしかありません。
人に薦められたものも、本当に面白いかは分かりません。僕はよく、「星新一さんのショートショートから初めてみたらどう?」とか、「僕の本読めば?」なんて言っていますが、その人に本当に刺さるとは言い切れない。
そして、全員が面白いと思う本ではなくて、「自分だけが面白いと思っている」と思える本との出合い、というものがあります。「これは自分だ、どうして自分のことを知っているんだろう」と思わされるような本に一度でも巡り合えば、読書の魅力を知ることができると思います。
なんて言いながら「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は世界で一番売れている小説なんですけどね(笑)。僕のような体験をする人が多いんだと思います。
あとは、「100分de名著」を見ることもおすすめです。「この本はこうやって読めば面白かったんだ」という視点に気づかせてくれるので。
ーー今回司会を務められる「100分de名著 for ティーンズ」で取り上げた作品はいかがでしたか?
どの作品にも味わい深さや学びがあり、収録していて楽しかったです。
第1回のトルストイ「人は何で生きるか」は寓話なので、分かりやすい話ではありながらも、そこに込められたメッセージを「100分de名著」らしく深堀りしていく。自分で読んでも気付けなかったことに気付かされました。それに、戦争の起きている今、トルストイを読んでほしいという思いはありますね。
第2回「WHAT IS LIFE? 生命とは何か」の生物学や、第3回「父が娘に語る経済の話。」の経済学は、10代だとなかなか食指が伸びないところかもしれないのですが、それらも含め、全ての学問は他人事ではない、と気付けると思います。
第4回の「竹取物語」は、皆がすでに知っている物語ですが、新たに面白く読み解けるポイントがたくさんあって、勉強になりました。どの回もとても面白いです。
ーーもしも今、加藤さんが若者に本を薦めるとしたら?
僕自身が小説家なので、小説を薦めたい気持ちもあるのですが(笑)......エーリッヒ・フロムの「愛するということ」です。少し難しい部分もありますが、皆が根源的に持っているはずの「愛とはなんだろう」という問いについて考えるきっかけになると思います。