【漫画】「男子がかわいいもの好きじゃダメなの？」偏見と向き合う少年の成長を描いた漫画が心に響く

2022/09/14 18:30

喋る大根がツイッターデビュー。コミカルな設定ながら心に響くストーリー展開が「泣ける」と話題　画像提供／内野こめこ

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回紹介するのは、内野こめこさんによる『喋る大根と少年が出会ってツイッターデビューする漫画』。同作は一人の少年が一本の大根と出会うことで、偏見と対峙し、成長するさまを描いたコメディタッチのドラマ。連載開始に際して、Twitterで公開したところ、8月17日時点で3万を超える「いいね！」が寄せられた。この記事では作者の内野こめこさんにインタビューし、作品へのこだわりなどを伺った。

しゃべる大根と心を通わせる少年。彼らに訪れた結末とは

とある農家で、収穫された一本の大根。手足が生え、ヒトのような形をしているこの大根の夢は「立派なふろふき大根になる」こと。ところが、珍しい形が災いし、出荷はおろか直売所での販売も難しいと告げられる。

このまま大根おろしにされてしまうのかと諦めていた矢先…。目を覚ますと、フリルがかわいいワンピースを着せられていた。サイズもピッタリ。驚きの声を上げる大根に「その服は僕が作ったものだ」と農家の少年が恐る恐る話す。手芸が趣味の少年は、大きさと手足がちょうどいい大根を祖父からもらい、ぬいぐるみ用として自作していたワンピースを出来心で着せたのだった。

少年ははじめこそ喋る大根に戸惑っていたが、服を称賛する大根に心を許し、次第に意気投合していく。かくして大根と少年はタッグを組み、服を着てポージングをする「だいこんちゃん」がTwitterデビューすることに。フォロワー数も伸び充実した日々を送っていたが、少年は、男子なのにかわいいもの好きである性格をコンプレックスに感じており、ぬいぐるみを持ち歩く女子たちをうらやましく思っていた。一方で、大根も自身の体に変化が訪れていることに気づいていた。そして、少年にある提案をするのだった…。

本作は、一人の少年の成長を通して、偏見に抗う者たちと、それを許容する周りの環境を繊細に描いている。コメディタッチなタイトルに反してTwitterでは「感動した」「ラストシーンが素晴らしい」などの感想が寄せられている。

「どこかに共感してもらえる漫画を」作者・内野こめこさんの創作のこだわり

『喋る大根と少年が出会ってツイッターデビューする漫画』より　画像提供／内野こめこ

――『喋る大根と少年が出会ってツイッターデビューする漫画』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

よく大根や人参などでヒトのような形をした野菜が見つかるので、そういうものが喋りだして服を着ていたらかわいいかなと思ったのが最初です。当初は最初の4ページだけが頭にあり、4ページ分のラフの段階では人間側の主人公を女の子の想定で考えていました。でも男の子にしたことで、5ページ以降の話がするすると出てきました。

――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

絵に関して気を付けていたところで言えば、「大根ちゃんがなるべくかわいく見えるように」と、「ラストの食事が美味しく見えるように」です。主人公の実君の心情については、性別がどうであれ、読んでいる方にも覚えのあるところがあるのではないかなと思います。作中のどこかで共感してもらえたら嬉しいです。

――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

シーンとしては夕焼けのススキ野原で写真を撮っているところです。セリフ無しで感情を込めるようなシーンを描くのが好きです。セリフはラストのほうのおじいちゃんのところです。私自身二人の子どもがいますが、ああいうふうに言えたらいいなと思いますね。

――本作の他に「うちのこざんまい」や「こちらアニマル社商品企画部保育室」など、家族の日常や育児に関する作品を多く描いていらっしゃいますが、理由があればお教えください。

「うちのこざんまい」は我が子についてのエッセイ漫画ですが、何にせよ子どもを持ったことでそれまでよりも「家族」や「親子」、それらを取り巻く色々について考える配分が増えたことは大きな理由だと思います。

――今後の展望や目標をお教えください。

今はまだ次男が園児のため、あまり漫画を描くための時間が取れない状況ですが、次男が小学生になる来年度以降は色々と描いていけたらいいなと思っています。