主演の仲野太賀と、草なぎ剛が見せた魂の演技
ラストは演出が冴えわたった。野本の店からの帰り道、幼少期の自分と武志の様子を思い出す諭。自転車で先に行く武志を「兄ちゃん待って!」と言いながら同じく自転車で懸命に追いかけるが、自転車を持って階段を上がることができずに泣きべそをかいてしまう諭。このシーンはこれまでも描かれてきたが、実はその続きがあった。武志は諭の元に戻り、手伝ってやっていたのだ。
大人の諭が、あたかもいま見ているような演出。そして、「早よ、来いや」との幼い武志の呼びかけに、大人の諭が「お兄ちゃん!待って」と追いかけ、泣き崩れた。
諭を演じる仲野の泣きの演技は秀逸で、他作品でも胸を打ってきた。本話でも、兄の死を聞いた時は、悲しみもさびしさもなかったとモノローグで語られたのだが、あらためて兄の思いを知ったあとに、喪失感から号泣するシーンには、震えるほどの感情があふれ出ていた。
そんな諭に、アメリカに旅立つ前の武志が声を掛けるという幻もなんともニクい演出だった。
仲野と草なぎが魂を込めて体現した“兄弟”の姿が感動をもたらす最終回となった。
※草なぎ剛のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記
◆文=ザテレビジョンドラマ部