「そして一緒に、死ぬのよ」
北が“生”に前向きになっていくのとは対照的に、彩女の“死”への思いも色濃くなっていった。自らの内に湧きあがる“生”への思いを断ち切るかのように、冷たく心を閉ざす彩女。
なんとか彩女を“生”に引き戻したいと願う北は「彩女さんの中でね、生きててよかったって思った瞬間ってなかった? 生きる意味を見出したりとか、しなかったの? ね、そもそも…そもそも彩女さん、なんでそんなに死のうとしてるの?」と、すがるように問いかけた。2人の間に横たわる、どうしようもない隔たりがもどかしい。
だが、彩女が表情を変えることはなかった。真っすぐ自分を見つめる北から視線を外し、「あなたのことは好きよ。とっても好き。だから明日、一緒にカニを食べて、そして一緒に、死ぬのよ」と冷たく言い放った。
入山法子が表現する冷たい“死”とほのかな“生”
重岡が、旅を通して自分の過去と向き合い「生きたい」という思いを取り戻すまでの北の心の移り変わりをリアルに表現。衝動的に死を渇望した北が“生”への思いを取り戻す過程を、説得力を持って演じている。
一方、入山演じる彩女の“死”への思いは根深い。「一緒にカニを食べて、そして一緒に、死ぬのよ」と静かに言い放つその表情は冷たく、妖気すら漂う。だが一方で、自分の中に湧きあがりそうな別の感情を必死に押しとどめているようにも見える。
雪女のような“死”への思いと、ドレスに憧れの目を向けた瞬間垣間見えた“生”への思い。旅の終わりに彩女の心を満たすのは、どちらの思いだろうか。9月16日(金)深夜放送の第11回では、北と彩女がついに、カニを食べる日を迎える。