もっともっと、のびのびした言葉を書いてみたい
最後の最後まで作り込みを楽しんだのは、『氷の世界』だったという。動物園での一コマを描きながらも自分の内側と対話するような歌詞を、チルなラップを思わせる淡々とした歌で紡いでいく。どこかひんやりとした感触を携えたながらも、浮遊感を漂わせる夢見がちなサウンドのマッチングが新鮮なナンバーだ。
「もともと状況説明とか、誰に対してこう言いたいという押しつけが好きな方なので(笑)、このアルバムにもそういう曲は結構入っていると思います。その中で、『氷の世界』のような、歌詞も1つのリズム楽器のように、この音にこの言葉を乗せると聞き心地がいいなとか、そういう語感とかを意識した、音楽的に心地よい曲を作れたことは良かったですね。説明的すぎず、これは一聴して何を言ってるんだろうという歌詞、聴く人に委ねる歌詞を書くことも楽しみになってきました。
あるアニメーションのクリエイターさんはストーリーからかっちり作るけど、別の人は1枚の象徴的な絵から作品を膨らませていくというやり方をするそうです。僕も、後者のように、あまり意味に縛られすぎないものづくりに可能性を感じているし、そうした方法で曲を作るのがすごく楽しいと感じています。もっともっと、のびのびした言葉を書いてみたいですね」
意欲的に新しい作り方に挑みつつ、これまで以上に自分の内側にも丁寧に向き合ったことで生まれたアルバム『ReLOVE & RePEACE』を、高橋自身はこう評している。
「すごくシンプルなテーマの中で作れたアルバムです。自由にやれたな、出したいものが出せたという気持ちがありますね。ですが、これで終わりじゃありません。僕は、これからも曲を創り続けていきたいし、人生で歌い続けていく中での8枚目のアルバムという位置づけです。
ここに収められた曲を表現して、自分なりに聴いてもらうように頑張ると新たに見えてくる景色があるんです。今、取材中に聴いた言葉も僕にとっては新しい情報で、それを寝る前に思い返したりして、それがヒントになってまた曲ができるかもしれません。そうやって、書きたいものが生まれていくし、そうした興味を持ったことに対して素直に向き合いたい。何でもかんでも興味が湧く人間じゃないから、興味がわいたことは熱心に掘り下げたいし、この約3年は掘り下げる時間を割くこともできました。そうしたこだわりを、この先さらに深めていきたいですね」
取材・文=橘川有子
収録曲●あいのうた/STAND BY ME!!!!/HIGH FIVE/勿忘草/I LIVE YOU/forever girl/沈黙の合図/氷の世界/ever since/雪の筆跡/ピーナッツ/Piece
高橋優=1983年12月26日生まれ、秋田県出身。2010年にメジャーデビュー。以降、CM曲、ドラマ主題歌なども手掛けるなど精力的に活動。2016年より自身主催の野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」を地元秋田にて開催している。12/23(金)の神奈川・よこすか芸術劇場公演を皮切りに「高橋優 LIVE TOUR 2022-2023『ReLOVE & RePEACE ~ReUNION 前編~』」を開催する
公式HP
https://www.takahashiyu.com/