声優という職業は、自分にしかできないことをクリエイトしようと思って選んだ道
――豊洲の2ndライブでも披露した3rdシングル「LOVE&MOON」は、表題曲・カップリングともに素敵な1枚になっていますね。高野さん自身は、今回のシングルにどのような手応えを感じていますか。
高野：1stアルバムでは、すべての曲にコンセプトがついたような楽曲が多かったので、今回の3rdシングルの2曲はそういうコンセプトはなしで、まっさらな自分が歌い上げるという意味では、シンプルで聴きやすいシングルになっているんじゃないかなって思います。
――まっさらな自分、とは？
高野：アクセサリーをつけてない、というか(笑)、飾り気のない、体当たりの自分が、この楽曲たちに入っているかなって思います。
――1stアルバム「ひとつ」の収録曲にはそれぞれコンセプトがあって、高野さん自身も曲選びに参加されてましたけど、今回のシングルでは楽曲制作にどのようにコミットしているんですか。
高野：今回収録されているのは、1stアルバムのときからずっと「歌いたい」と温めていた楽曲たちなんです。いつか歌いたいと思っていた曲が、アニメのタイアップ曲に選ばれて、歌うタイミングをいただけたので、ありがたく歌わせていただいています。アニメの主人公のナチュラルな感情を自分の中に落とし込みつつ、自分自身が共感できる歌詞のところではキャラクターのことを一瞬忘れて歌うとか、柔軟に考えながら歌いました。
――歌うときはまっさらな自分で、という話がありましたが、歌詞において高野さんがポイントになると感じていたフレーズはありますか。
高野：やっぱりこの曲から切り離せないと思うのは、「月」です。「月がきれい」という言葉は、日本人としては「LOVE」を思い起こさせる言葉であり、はたまた癒しの光を思い浮かべる、人によって受け取り方は違うと思いますけれど、そこにあるのは絶対的にあたたかい気持ちだと思うんです。月がきれいに見える瞬間を思い浮かべながら歌うと、この楽曲の「らしさ」が見えてきました。歌い終わったあとに、ホッコリと優しい気持ちになれる曲だと思います。
――曲タイトルの「LOVE」は「月がきれい」からきているんですね。
高野：わたしはそう解釈しています。なんか、関係しあっている言葉だと思っていて。LOVEがあるときに見上げる月ってきれいですし、月があるときの愛情も、より深まるんじゃないかなって思います。温かい気持ちで関係し合うワードだなって思います。
――1stアルバムの「ひとつ」は、非常に力を注いで作られたアルバムだと思いますが、アルバム制作の経験によって、どのような部分が成長したと感じていますか。
高野：成長は……まだわたしには感じられなくて。きっと、自分が成長したと思えるのって20年後くらいじゃないかなって思います(笑)。この業界に入ってからも、もし過去の自分がキラキラして見えたとしても、そこから絶対に成長していきたいって思うからこそ、振り返らないようにしています。自分が成長できているかどうかは、何十年か後にきっと、自ずと見えてくるんだろうなあって思います。
――なるほど。今回のシングルにカップリングとして収録されている「スミレ」は、ここまで話してくれたような高野さんのマインドがわりと反映されている曲なのでは、と思うんですが、思い入れを持ってレコーディングができたんじゃないですか。
高野：この曲の歌詞は、自分の人生に近いなあって歌詞で感じています。慎ましく生きて日々の喜びを感じることが幸せ、見落としてしまいがちなことをちゃんと見つけてあげられる自分でいたい、みたいなメッセージが詰まっているんですね。人の幸せの程度って、やっぱりそれぞれ違っていて。隣の芝生が青く見えることもありますけど、それって他人の芝生でしかなくて。そういうことが想像できる、深い歌詞だなって思いました。
――“「誰か」のじゃない「わたし」の世界”というフレーズが印象的でしたが、高野さん自身はどのように解釈しましたか。
高野：物語の主人公は自分しかいないので、「自分がつかむかもしれなかった」とか「かもしれない世界」よりも、いま自分がいる世界を大切にしてあげたいと、わたしは思います。だから、誰かが見ているかもしれない景色より、今この景色を楽しもう！って思いながら歌いました。それは、音楽活動だけじゃなく、ずっと思っていたことでもあります。声優という職業は、自分にしかできないことをクリエイトしようと思って選んだ道なので、この曲はわたしの業界人生を司った曲、歌詞なんじゃないかなって思います。自分の居場所を自分で作りたいと思って、歌っている気がします。
