「ベスト」な相手はいないものか
仕事に集中するのだっていい。娘がいると、うちでは落ち着かず、いつもYouTubeの音がしているし、何かと呼ばれる。
「ママ!梨むいて!」
「ママ!ドアしめて!」
「ママ!おっぽがうんちしたから片付けて!」
「ママ!梨食べたからお皿持ってって!」
「ママ!聞いてるの!」
「ママが聞いてくれない、さみしい!」
「ママもう大丈夫、寂しくないから静かにして!」
王様のように命令していただけますから、原稿に向かおうにも気が散る。翌朝だって娘がいないのだもの、お弁当の心配もいらなければ早朝起きしなくてはならないわけでもない。朝まで心置きなく原稿を書いたり考えたり、台本を読んだりできる。
久しぶりに銭湯に行くのもいい。大浴場や露天風呂、炭酸泉やサウナ、マッサージ風呂や寝湯、ゆっくり浸かって、空を見上げると星が出ている。学生時代は毎日のように名古屋のスーパー銭湯に通った。知らない人たちと大きなサウナの中でバラエティ番組を見ながら笑うのが好きだった。タオルを水で濡らして、何故だか股をバンバンと叩きつけるおばさんは元気だろうか。おっぱいがヘソほど低い位置にあるおばあさんたちを不思議だと思って湯船からジッとみていたが、わたしも予備軍になってきて、若い女の子達にジッとみられたとしても平気になってきた。歳をとるということは何事にも堂々としていられる良さがある。若い頃はナプキンのCMをみるだけで恥ずかしかったのが意味不明。ああ銭湯のことを想像しただけで疲れがとれるようだ。
デートをするのも良い。それ最高だ。瀬戸内寂聴先生はおっしゃった。「女は灰になるまで」。いや、それ最高なのだが、好きになれば女であることをとりたくなる自分がきっといるし、そこまで好きでなければわざわざデートするより、1人をチョイスしたくなるわたし。バランスがうまく取れないうちはデートはやめておこうか。母であり女である。あーどこかにベストの相手はいないものか。世の中に、たった1人でいいのだから。1人なら、ベスト、どこかにいるんじゃないかしら。
時計をみると既に深夜。LINEに返信したりInstagramをみたりしていたらこんな時間だ。娘のいない夜、食事はほとんど納豆とごはんだけになる。気がつくと娘の小さな頃の写真をみている。なんと可愛らしい。あんなに待ち遠しかった1人の夜だが、すぐに娘に会いたくなるのだ。
娘が帰る明日が待ち遠しい。
1973年愛知県生まれ。大学卒業後、フリーアナウンサーを経てタレントの道へ。「どこ見てんのよ!」のネタでバラエティ番組でブレイク。2007年に結婚、2010年に出産。2012年に離婚。現在はバラエティ番組やドラマ、舞台などで幅広く活躍中。
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