自分一人では抱え切れない思いを抱いて一人で現実逃避した“F”を演じた尾野、狂気すらも感じさせる勢いで近づいてくる“F”の姉を演じた酒井、常連客たちをいつも温かく迎えるBarのオーナーを演じたChara、“M”に「もう少し誰かのうそに付き合ってあげたら」と諭すBarの料理人を演じた宮藤、“M”と世代の違う担当編集者・澤田役の渡辺大知、“謎の美女”を演じた大島といった静かでありながら強い勢いで“M”を巻き込んでいく共演者たちの芝居も光ったが、何より彼らの芝居をリアルな人間として受ける阿部の芝居があるからこそ、この作品特有の“大人”なテイストが醸し出されている。
初回配信前の取材で「役者として新しい試みに参加できることは楽しい。こういう映像世界ってどんどん今後変わってきていますから。自分でも新たな道に入っていかなければいけない。それを早々にやらせていただけるのはありがたいことです」と語っていた阿部だが、自身初となる配信フィールドのドラマで、まさに新境地を開く演技を見せた。
“F”の失踪にまつわる縦軸のストーリーを堪能した後は、阿部の芝居に注目して「自分を置き去りにして周りは変化していく」「どうすることもできないこともある」「常に時間が流れており、どんな時でも生きていかなくてはならない」など、大人だからこそ刺さるメッセージを受け取りながら、改めて大人なじわりとした苦みを存分に味わってみては。
◆文=原田健
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/because-we-forget-everything
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