興津の協力要請に那由他が出した答えは
彼らがシアトルに旅立つまであと3日となったとき、SAGAS社長の興津がアトムにやってきた。SAGASが投資会社に買収されそうで、助けてほしいと頼みに来たのだ。買収の目的は“技術の市場開放”で、興津が奪ったアトムの特許・アトムロイドが誰でも使えるようになる、と聞き、繁雄(風間杜夫)以下アトムの社員は良いことだと喜ぶが、それは本来の目的以外で悪用される恐れもあるということだ。だから、SAGASのゲーム事業を売却するつもりの投資家の思惑を阻止するために、オリンピックのeスポーツで初めて採用されるゲームを開発して、SAGASの力を誇示したいとのことだった。
2週間後の株主総会で、とりあえず数10秒の見せ場だけ作って、株主たちに期待感を抱かせられれば良いのだと言う興津。彼は、うまくいった場合の協力の礼としてアトムロイドを返す、と言うが、アトム側は全員が「興津になんか協力しない」と息巻く。しかし那由他だけは「“アトムの魂”であるアトムロイドを取り戻したい」と、興津の頼みをきいてやろうとする。
これまで興津にさんざん辛酸を舐めさせられてきた隼人は、「返す、なんてのは口約束だよ。真に受けんなよ!」と怒り、繁雄にも「気持ちは嬉しいが、SAGASにいい顔はできない。これはプライドの問題」とハッキリ断られてしまった。
翌日、海はSAGASに「協力はしない」とアトムの立場を告げに行く。そしてロビーで協力するために来た那由他と鉢合わせする。なぜ協力するのかと問う海に「アトムのファンだから」と那由他は答えた。
考えの溝が埋まらない那由他と隼人…
シアトルへ行く日が迫り、隼人は那由他を呼び出す。そして、盗られた物を奪い返すためにSAGASで働くのは昔の自分と同じで、そのやり方は違うと言ったのは那由他だ、と。「犠牲になるな」と言う隼人に、那由他は「犠牲じゃない。オレ、ワクワクしてんだよ」と告げる。アトムロイドを使いこなすにはSAGASの技術力が必要で、改めてSAGASのすごさを実感した那由他は「どんなゲームができるかワクワクしてる」と、キラキラした表情を見せるのだった。
このままアトムをほっておけないと言う那由他と、ティムを裏切るのかと言う隼人…2人の溝は埋まらない。そして、「シアトルに行くのが2週間遅れるだけ」と言った那由他に「オマエ、ほんっっとーにわかってないんだな、自分のこと!」と、ついに隼人がブチギレ。
那由他のことを誰よりもわかっている隼人は「オマエは1度始めたらのめりこんで、納得いくまでとことんやりたいと思うヤツだ。数10秒のデモを作るだけじゃ満足いかなくなって、完成するまで何年もSAGASでゲームを作り続けるよ!」と涙目で怒りをぶつけた。
隼人の熱い訴えを冷静な表情で聞く那由他。隼人は、那由他に会いに来た時点で、彼の決断を変えられないことはわかっていたはずだ。そして、乗りかかったら最後、完成するまでやめられなくなることは、那由他本人も薄々感じていたはず。それなのに「2週間で手を引く」と、その場しのぎというか非現実なことを言うから、隼人はブチギレたのだと思う。今回の別れはもう2度と同じ道に戻れないかもしれない…2人にとって重大な決断になるかもしれない…と隼人は覚悟しているが、那由他はそこまで深刻に考えていないのか?…そんなジレンマが見えるような隼人の怒りだった。
イヤな沈黙が続き、隼人が口火を切った。「一応、別れの挨拶だけ言っておこうと思って……。じゃあな!」。そう言って那由他に背を向けて彼は去った。
振り返ることなく去っていくその後ろ姿をしばらく見送った後、那由他のポーカーフェイスが少し歪んだ。そして隼人の背中に向かって「じゃあな」とつぶやき、泣きそうな顔で隼人とは逆の方向に歩き出した。どちらの言い分もわかるだけに、せつなさが増す別れ方だ。「このまま別れちゃうなんて、イヤだ」「もうケンカしないで」など、“なゆはや”コンビのファンたちの哀しみコメントがTwitterにもあふれていた。
那由他と隼人、1人でももちろん才能にあふれているが、2人が揃ったときはその何倍もの力を発揮する。お互いにとって唯一無二のパートナーだ。三たび“ジョン・ドゥ”として活動する日が来ることを祈りながら、ラストまで2人の動向を見守りたい。
※山崎賢人の崎は正しくは「たつさき」
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
Happinet
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ビクターエンタテインメント
発売日: 2022/11/23