荒牧慶彦、『2.5次元』業界の成長と共に歩んだ10年「メインフィールドはずっとここでいたい」
2.5次元作品は、キャラクターの解釈を広げられる
──ちなみに、俳優を始めた頃、自分が独立して会社を立ち上げるということは想像していましたか?
そうですね……うーん。でも事務所を辞めるんだったら、そのあとはどこかに所属するんじゃなくて自分でやりたいと思っていました。
──自分でやりたいと思っていたのはどうしてですか?
すべての事務所がそうではないと思いますけど、どうしても「いつまで2.5をやるんだ」と言われてしまうことって多いと思うんです。舞台から離れて、テレビや映画などの映像へ行かせようとしたり。でも、そもそもビジネスモデルが変わってきていると思っていて。単に映像に出ればいいということでもない。一度舞台を離れて映像作品に出て、そのあと出られなくなったらどうするのか。舞台に戻ってきたときにファンの方がついてくださるのか。そういう意味でも、2.5次元舞台に特化した新しい事務所を立ち上げてしまったほうが、僕らが信じる道を突き進めると思った。それに沿ってくれる事務所さんってなかなかないので。
──なるほど。特化した事務所をつくってしまうほどの2.5次元作品の魅力を、荒牧さんはどこに感じていますか?
僕、子供の頃から「三国志」の趙雲に憧れていて、公園で棒を振り回していたんです。要は漫画やゲームのキャラクターになりたかったんですよね。ゲームの世界、アニメの世界に入りたいなとずっと思っていた。2.5次元舞台って、まさにその世界に入れているわけで。
──確かにそうですね。とはいえ、原作ファンもいるからこその難しさなどもありますよね。
なぜかはわからないですが、僕は「原作ファンの皆様の解釈と違ったらどうしよう」と思ったことがあまりないんですよ。僕自身がアニメや漫画を好きだからわかるんですけど、アニメとか漫画とかゲームって、そのキャラクターの映ってない瞬間があるじゃないですか。そのときにキャラクターが何をしているのか、どんな歩き方をするのか、どんな癖があるのか。そういう解釈を広げられるのがこの仕事。その解釈が見ている方と違ったら「すみません、違ったんですね」となりますけど、実際は「解釈が広がりました」と言ってくださることがすごく多くて。役者冥利につきます。あと、2.5次元は人が演じる分、人間くさくなって愛せる部分も増えると僕は思っていて。その余白を埋める感じが楽しいです。「荒牧くんが演じたことによって、知らなかったキャラクターの魅力がより深くなりました」と言ってもらえることが一番うれしいし、やっている中での一番の楽しみでもあります。
──では、今後も2.5次元作品にはずっと出ていきたい?
はい!原作ものじゃない作品に出ることももちろんあるとは思いますが、メインフィールドはずっとここでいたいです。
■取材・文/小林千絵
撮影/MARCO
荒牧慶彦 俳優デビュー10周年記念公演「殺陣まつり~和風三国志~」
2022年12月15日(木)~18日(日) 東京・明治座公式サイト
https://www.meijiza.co.jp/info/2022/20221204/
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