悲観する豊を耕司が励ます
豊は「あの…」と言いづらそうにしながら「お父さんはどうやってそんな大切な人、お母さんとの別れを乗り越えたんですか?」と尋ねる。人生で初めてできた大切な人たちを失ったらと考えると、怖くて耐えられないと吐露する豊。「存在がこれ以上大きくなる前に、離れた方がいいのかなって…」と声を震わせる豊に、耕司は自分は妻のことをまったく乗り越えられていないという。
今でも妻が恋しくてのたうち回るし、こんなに辛いなら出会わなければ良かったって泣いたりもするという耕司は「それでも僕はいいと思ってるんだ。誰かを愛することって失う時の痛みも引き受けるっていうことだと思うんだよ。この痛みは妻を愛した証なんだ」と続け、愛おしそうに実花の写真をなでながら、この痛みを味わえて僕は幸せなんだと話す。
そして耕司は豊に向き直って「大丈夫だよ、豊くん」と手を取り、「君はひとりじゃない、穣と種に出会ってくれてありがとうね」と感謝を述べる。止めどなく涙を流す豊。別れのときには一緒に痛がろうぜと耕司が言うと、豊は泣いてうなずきながら「はい」と答えた。
それを部屋の前で立ち聞きしていた穣も涙を指で拭くのだった。
いつもはおちゃらけている耕司だけど、酸いも甘いもかみ分けているからこそ明るく柔らかい人柄なのだと思うと涙が止まらなくなる。人の心の機微にも敏感で、ここというときにはフォローしてくれる耕司の存在は、穣にも豊にも、そして見ている視聴者にも大きく頼もしいものだとひしひしと感じられた。
◆構成・文=牧島史佳