ときにはアホに見られても仕方ない(笑)
「あとは企画書を作るときに、自分の感情が動かされたものをそのまま書くようにしています。要は、面白そうなことをそのままストレートに企画にする。例えば、今年の1月から、池の水を全部抜くと、そこはどうなってるのかを調べるという特番(「日曜ビッグバラエティ『緊急SOS! 外来種から日本を守れ “池の水ぜんぶ抜く”』」)を立ち上げたんですけど、企画書の段階では、番組タイトルを『池の水抜いちゃいました』にしてたんですよ(笑)。池の水を抜くだけでゴールデン2時間。だったらこのタイトルしかないだろうと。当然、上の方から『タイトルだけは何とかしろ』と言われましたけど。結果的に面白い番組になったし、視聴率もよかったんで、あのタイトルでよかったんでしょうけど、僕の中では『池の水抜いちゃいました』にしたかったなっていうのはありますね」
――(笑)。考えてみれば、伊藤Pが作る番組は、インパクトの強いタイトルが多いですね。
「意味不明だけど、なんか引っ掛かる、そういう言葉をタイトルにしたいんですよね。そこから番組の方向性が決まることもあるし。逆に言うと、タイトルに納得いかないまま始まった番組は、たいてい即死してます(笑)。
『やりにげコージー』は確か、演出の堤本(幸男)さんと会話する中で、『“やりにげ”っていう言葉が面白いよね』という話をしたのがきっかけです。そこに、今田(耕司)さんの『まだ世間では知られていない面白い芸人をどんどん出そう』というアイデアも加わって、新しいスター芸人もたくさん生まれて。“やりにげ”というタイトルのおかげで、自由に、いい意味で気楽にやれたところはありますね。どんな無茶な企画も、どうせ“やりにげ”なんだから、まぁいっか、みたいな(笑)。
『モヤモヤさまぁ~ず2』は最初、企画書では『ちんちんさまぁ~ず』っていうタイトルだったんですよ。ちんちんっていっても下ネタじゃなくて(笑)、ちんちん電車のことで。電車ごっこみたいに、さまぁ~ずが縄の輪っかを持って街を練り歩いて、出会った人をどんどんその輪の中に入れていくっていう企画だったんですけど、大竹(一樹)さんの『面倒くさい』の一言で“モヤモヤ”になりました(笑)。考えてみると僕は、そんな風に、その場その場で誰かが言ったことをどんどん番組に取り入れるのが好きなのかもしれない。やっぱり番組って、スタッフや出演者みんなの思いが大きくしていくものなんだと思います」
――伊藤Pの作る番組は、ニッチな部分を掘り下げていく面白さが一番の特色だと思うんですが、それは今や、“テレビ東京のバラエティー”全体のカラーにもなってきていますよね。
「他局の人にもよく言われるんですよ、『どうしてそんな細かいことが気になるの? こんな企画、うちじゃ番組どころか、1コーナーにもなんないよ』って(笑)。自分たちは特に意識はしてないんですが、やっぱりお金もない中で知恵を絞って、1時間、2時間の番組を作らなきゃいけないわけで、それはどこか、小さい穴を掘っていくような作業なんですよ。だから、ときにはアホに見られても仕方ない(笑)。でも、ニッチではあっても、最終的な目的地はしっかり持っておかないとダメでしょうね」