アイナ・ジ・エンドが主演を務める映画「キリエのうた」が10月13日(金)に公開される。アイナ・ジ・エンドが演じるのは、歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン、キリエ。本作が映画初主演となったアイナ・ジ・エンドは、「映像の中に飛び込めるのがうれしかった」そう。また、6月には所属していたBiSHが解散し、現在は個人の活動へと切り替わっている。そんな変化の中で撮影した本作の魅力や、自分にとって「BiSH」や「歌」という存在とはなにか、についてたっぷり語ってもらった。
“歌しか居場所がない”という点は自分と似ていた
――「生きるとはなにか」というのを問いかけるような作品だと感じました。アイナさんは映画初主演という、ある意味挑戦となった作品だったと思うのですが、いかがでしたか?
岩井俊二さんの世界観に飛び込むっていうのは、すごく楽しみではありました。「undo」とか「PiCNiC」とか「スワロウテイル」とか…岩井さんの作品って、普通じゃない子たちが肯定される作品が多いんです。 それを見た時に「あ、私も私のままでいいんだ」って思ったので、そういう岩井さんの作る映像の中に自分も飛び込めるのは、本当にうれしくて、「ありがとうございます」の気持ちでずっとやっていました。
――実際に完成した作品をご覧になられた時のお気持ちは?
「岩井さんの感じ、すごく好きだな」と改めて思ったのと、自分については「もっとできたな」とか、「もっとこう歌えばよかったのかもな」とか、自分に対しての“もっとできた感”が否めないところはあったのですが、その不完全さがいい危うさや儚さになったのかもなと、今は思えるようになってきました。
――アイナさんが最初に脚本を読んだ時の1番の率直な感想を教えてください。
自分にすごく近しい役柄だなと思ったのが、脚本を読んだ時に1番最初に思ったことでした。かけ離れている役だったらどうしよう、って思ったりしていたんですけど、“歌しか居場所がない”という点は自分と似ているなって。初めてお芝居の世界に飛び込む身としては、それが少し安心材料ではあったので、なんとかやり遂げられそうと思いました。
――最初に「主演です」と言われたときは、不安の方が大きかったのでしょうか。
そうですね。でも自分が主演だとあまり思っていなくて…。ぶっちゃけると、この映画のプロモーションが始まるまで思っていませんでした。私と松村北斗さんと広瀬すずちゃんと、3人でずっと撮影をしていたので、3人で主演だと、ずっと勝手に思っていましたね。
ですが、初めての完成披露試写会で、「主演のアイナ・ジ・エンドさんです」と言われて「あ!主演だったんだ」って気づくという感じで…やばいなと思っていました(笑)。
お芝居はコンテンポラリーダンスに似ていた
――いつも歌という形で表現をされていると思うのですが、今回演技に挑戦して、面白さ、難しさなどは感じましたか?
演技は面白かったです。岩井さんの撮影はカットがかからなくて、私は岩井さんの現場しか知らないのでわからないのですが、すずちゃんや松村さんは「独特だ」と言っていました。例えば松村さんとのシーンは、とっくにセリフは終わっているのに、そこから15分ぐらいカットがかからなくて(笑)。
でも、そのカットがかからない状況で、お互い役に入ったままアドリブを繰り広げていく感覚が、コンテンポラリーダンスに似ているんです。なので、すごく楽しかったです。
――やり方や出力の仕方は違うけれども、方法としては近しいものがあったという感じですか?
そうですね。4歳からダンスをやっていたんですけど、 お芝居っていうのがかけ離れた存在に見えすぎていただけで、意外に表現っていうのは全部繋がっているのかなと思いました。
――カットがかからない撮影の中でも、岩井監督からの指示とかはあったりするんでしょうか。
それも全然されなくて…。私はもうこれが普通なんですが、すずちゃんとか松村さんは指示がなさすぎるから、「大丈夫だったんですか?」みたいな、不安になっている様子が伺えて、私はそれを見て「あ、他の現場はもっと指示があるんだろうな」と思っていました。
――初めての現場で指示があまりないというのは、アイナさん的にはやりやすかったのですか?
もちろん、岩井さんのこだわりのシーンは、すごく指示があるんですよ。私の声のかすれ方とか、ひそひそ声の音量とか。私は、指示があってもなくても、どちらでもいいなと。ない時は、多分委ねてくれているんだろうなと思えるし、ある時は岩井さんのこだわりがあるんだなと思えるので、どちらも好きでした。
2023年10月13日(金)全国公開
【原作・脚本・監督】岩井俊二
【企画・プロデュース】 紀伊宗之(『孤狼の血』シリーズ『シン・仮面ライダー』『リボルバー・リリー』他)
【出演者】アイナ・ジ・エンド 松村北斗 黒木華 / 広瀬すず
【制作】ロックウェルアイズ
【配給】東映