今夏ドラマの“バズる”仕掛けは「ミュージカル」。松岡茉優が踊るワケとは?【木村隆志コラム】
真木よう子の土下座PRはアリか?
最後にふれておきたいのは、「セシルのもくろみ」(フジ系)。正直、番組サイドのPRには物足りなさを感じるが、主演の真木よう子が頑張っている。6月28日に開設したばかりのツイッターで、土下座して視聴をお願いしたり、フォロワーのコメントにリプライしまくったり、他の作品を挑発するような言葉をつづったり、低視聴率を受けて「むしろ更に燃えてきた」とガッツを見せたりなど、話題を振りまき続けているのだ。まさに「掟破りのセルフPR」であり、なりふり構わない姿勢には心を打たれる。見方によっては、“新たな仕掛け”とも言えるが、主演自らのPRは、リスクが高い割にバズる可能性は少ない。シェアされ、バズるためには、イソップ童話「北風と太陽」のように、誰かの強い働きかけではなく、自ら「そうしよう」と思わせなければいけないからだ。また、「土下座してまで視聴率を取らなければいけないのか」「だからドラマの主演はやりたくない」と、映画や舞台に専念する俳優が増えかねない危険性をはらんでいる。つまり、本人だけの問題ではないため、制作サイドには真木への十分なケアが求められるだろう。
ともあれ、ミュージカル風のシーン、渡辺直美を生かしたインスタグラム戦略、ストレートなバイオレンスとエロ、主演女優のセルフPRと、「新しいことをやってみよう」と挑戦する姿勢は歓迎したいし、バズることを祈るばかりだ。なかでも今後のカギを握りそうなのは、ミュージカル風の演出。たとえばこの先、歌舞伎風や無声映画風のシーンが導入されても面白いのではないか。そんな演出の自由と広がりを感じさせるスタートとなった。
profile=きむら・たかし●コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、「新・週刊フジテレビ批評」「TBSレビュー」などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマは毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など