意識しているのは「気持ちで見られるように」
――野球のルールがあまり分からない方も楽しめるように工夫した点があれば教えてください。
奥寺:脚本をつくる上で“気持ちで見られるように”というのは意識していました。野球もドラマの一部で、試合の中で気持ちがどう変わるのかということをちゃんと作らないと、野球が分からない方は置いてけぼりになっちゃうよね、という話はよくしていました。
――脚本の制作から撮影通して難しかったことはどういった部分でしたか?
奥寺:試合の内容ですね。野球って約2時間試合をすると思うのですが、複雑で高度なスポーツだからこそ、一球、一打席で勝敗の流れが変わってしまうので、それをどうダイジェストにしたらいいか分からず…細かい部分は、野球経験のあるスタッフさんや監督たちと話し合いながら決めていきました。なので、どの試合シーンもものすごい人数の方が関わっています。
新井:脚本の中で、奥寺さんが「ここでこういう気持ちになる」とか「ここで試合が逆転する」とざっくり流れを書いてくださっているのを見て、監督と野球経験者の方とで6時間くらいかけて細かい部分を考えています。「ここで楡の打順が回ってきて、これを打つ。だから打順はこうしよう」とか。
でも、現場で変わることも多々あって。最初の頃は「レフトに飛ぶ」って書いてあったら、レフトにいくまで何十球でも打っていたのですが、だんだんと「もうレフトじゃなくて良くない?」ってなるようになって(笑)。打てた内容に合わせて実況も変えるようになりましたね。
実は脚本に実況は全く入っていないのですが、実況がないとルールが分からない人にとっては「ピンチなの?チャンスなの?どういう状況?」ってなると思うんです。第1話の試合シーンには実況が入っていなかったのですが、試合展開がよく分からなくて。
そんな中で、第2話のときに奥寺さんから「ラジオを入れたい」と提案してくださって。犬塚(小日向)がラジオ中継するという設定を入れてみたところ「実況あるのとないのとだと全然違う!」となり、以降全ての試合に実況を入れることになりました。
――実際に映像で見て心動かされた演技はありますか?
奥寺:全部なので具体的に挙げるのは難しいのですが…やはり鈴木亮平さんは素晴らしいですね。(南雲は)矛盾を抱えていたりといろんな要素を持っている人物なのですが、先生をやっているときも、無職のときも、監督をやっているときも、ちゃんと一つの人間の中にその要素が入っているというのは、やっぱりすごいなと。特にみんなに叩かれているときに体が小さく見えるというのは驚かされましたね。