【テレビの開拓者たち / 坂本浩一】注目のアクション監督は“アクションとドラマの共存”が信条
個人的な趣味も含めて、強い女性に憧れるんですよ(笑)
──ファンの間では、アクションシーンを見ただけで坂本監督が演出しているのが分かるくらいに、個性的なアクションは坂本作品の最大の美点だと思うのですが、監督がアクションの演出をつける上で一番こだわっているところは?
「これもジャッキー・チェンからの受け売りなんですけど(笑)、最も大切にしているのは“リズム”です。アクションが単調だと、見ていて飽きちゃうんですね。でも音楽と同じように、動きやスピードに緩急をつけると飽きずに見られるんです。だからアクションを構成するときはいつも、頭の中でそのリズムを計算しながら、いかに単調にならないようにするかに腐心しています。
また、僕は常々、アクションシーンがドラマ部分とシームレスに繋がっていることが、いいアクション映画の条件だと思っていて。中には、ドラマ部分とアクション部分が全然違う世界観で、別の作品に見えるようなこともある。僕は、アクションが付属物ではなく、アクションシーンを前提としながら物語が進行していくという形が好きなんです。スタントマン出身ということもありますが、その“アクションとドラマの共存”を自分のセールスポイントとして、両方のバランスをとりつつ、最終的に、観客のみなさんが『ドラマのあるアクション作品を見た』と思える、そんな作品をつくることが目標ですね」
──もう一つ、坂本監督の作品はほぼ確実に女性キャラのアクションがあるというのも特長ですよね。
「個人的な趣味も含めて、強い女性に憧れるんですよ(笑)。日本はアイドル文化というか、かわいい女の子が人気ですが、海外では、セクシーな大人の女性が魅力的な女性の代名詞になることが多いんです。僕が惹かれるのもそういう女性なので、戦うヒロインというか、男性だけでなく女性から見ても憧れる、かっこいいヒロインが撮りたい、というのは常にありますね」
──ちなみに、坂本監督にとってターニングポイントとなった作品は?
「一番大きかったのは『赤×ピンク』(2014年)という映画です。原作は桜庭一樹さんのライトノベルで、脚本は港岳彦さん。つまり原作者は女性、脚本家は男性、という作品で。撮影前に、出演する女優さんたちを集めて、『作品について言いたいことを全て言い合おう』と意見交換をしたときに、桜庭さんの原作を男性目線で読んだときと女性目線で読んだときの感想がかなり違っていたんですね。その瞬間、男性と女性、それぞれが感じているヒロイン像の違いが明確に見えたような気がして。そこから、男性も女性も関係なく、誰もがかっこいいと思えるヒロインのキャラクターを作っていこう、という作業が始まったというか。『赤×ピンク』では、そういった登場人物のキャラクターの造形の仕方を学んだような気がします」