高橋一生とは何者か?【てれびのスキマ】

2018/01/20 05:00 配信

芸能一般

役者業に捧げた時間の密度の分だけ、色気を醸し出す

いくらなんでも高橋一生に頼りすぎだろ。

そんな高橋一生過剰依存問題が発生するほど、2017年は高橋一生の年だった。

’17年の1~3月に放送された『カルテット』(TBS系)を機に大ブレイクを果たすと、もはや社会現象。すぐにドラマに引っ張りだこになり、あまり必要性を感じない半裸シーンを連発したり、ヒロインを都合よく助けるヒーローとしてチラッ、チラッと出演し、その魅力でドラマ自体を危機から救っている。その活躍はドラマにとどまらない。雑誌でも本屋の棚が高橋一生だらけになるほど表紙やグラビアなどに頻繁に登場。考え抜かれた自分自身の言葉を持っている彼はインタビューでも引っ張りだこ。各メディアはこぞって彼を取り上げた。もちろんこの記事も例外ではない。

しかし、彼は急に出てきたわけではない。月並みな言葉でいえば、「やっと時代が追いついた」と言えるだろう。高橋一生が『カルテット』でブレイクして以降、SNS上では「#ファースト高橋一生を披露する」といったハッシュタグが流行した。つまり、自分が最初に高橋一生という俳優を認識したり、気になり始めたのがいつだったかを披露するというものだ。そういったものができるほど、彼の芸歴は長い。

高橋一生は8歳のころに児童劇団に入団、’90年、10歳の時、ビートたけし主演の映画『ほしをつぐもの』でデビュー。’93年には特撮ドラマ『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(テレビ朝日系)で敵側のボス・魔女バンドーラ(曽我町子)の息子・カイという印象的な役を演じ、特撮ファンに印象を残している。そして、’95年、一つ目の転機といえるのがジブリアニメ『耳をすませば』のヒロインの相手役・天沢聖司の声優を務めたことだ。これが、「ファースト高橋一生」という人も多いだろう。続く二つ目の転機は宮藤官九郎との出会いだろう。クドカン地上波ドラマデビュー作となる『コワイ童話「親ゆび姫」』(’99年TBS系)でやはりヒロインの相手役、さらに『池袋ウエストゲートパーク』(’00年TBS系)に出演。もうすっかり青年。長髪の引きこもり役を演じた。このころは、こうした内向的な役が多かった。’04年には『怪奇大家族』(テレビ東京)で主演を務め、サブカル界隈では確固たる地位を確立。翌年の「TV Bros.」誌が行った「ブロスが選ぶ好きな男」ランキングで2位に輝いている。’14年は坂元裕二脚本の『モザイクジャパン』(WOWOW)でAV会社の社長をエキセントリックに演じた後、直接のブレイクのきっかけともいえる『民王』(’15年テレビ朝日系)にクールで毒舌な“童貞”秘書役でチャーミングな姿を見せつけ虜にした。’16年はその『民王』のスピンオフで主演、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、『僕のヤバイ妻』(ともにフジ系)、映画『シン・ゴジラ』などで印象的な役を次々に演じ、今年『カルテット』で大ブレイクを果たした。

「自分が思っていることや芝居に込めた意図って、1割も伝わっていないと思う」(「SODA」’17年11月号)と彼は言う。けれど、それで十分だと。なぜなら「見てくれている人の人生を豊かにするものがお芝居だと信じているから」(同)。そのために自分の意図や思いは関係がないからだ。けれど、彼が演じる人物から僕らが受ける感情はいつだって豊かだ。喜怒哀楽のうちのひとつの感情では説明の付かない、名前のない複雑な感情が、彼の表情から、台詞から、仕草から感じ取ることができる。たっぷりな色気とともに。それは彼が「1割」しか伝わらないと割り切っているからこそ、得られるものではないか。1割しか伝わらないのならば、その10倍の意図と思いを詰め込む。その中から何を感じ取ってもらっても構わないという割り切り。だからこそ、時に本人の意図や思いを超えるものが伝わっていくのだ。

高橋に言わせると、俳優は、「自分の肉体とか精神を使って別の人生を自分に同化させることに喜びを感じている人」だという。だから「嘘では経験値はもらえない」(同)。全身全霊で役者として役に入り込んでいく。そんな役者業に高橋は一生を捧げてきた。だから彼と向き合うと自ずと自分たちがこれまで見てきたものを思い起こすことになる。

その役者に殉じた時間の密度の分だけ、彼は色気を醸し出している。

(文・てれびのスキマ)

◆てれびのスキマ=本名:戸部田誠(とべた・まこと) 1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『1989年のテレビっ子』、『タモリ学』、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』、『コントに捧げた内村光良の怒り』など多数。雑誌「週刊SPA!」「TV Bros.」、WEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載も多数。2017年より「月刊ザテレビジョン」にて、人気・話題の芸能人について考察する新連載「芸能百花」がスタート

「月刊ザテレビジョン」(毎月24日発売)にて、てれびのスキマが毎号1人の芸能人に絞り考察する新連載「芸能百花」がスタート! 第6回の“お題”「高橋一生」は発売中の2月号にて掲載

◆てれびのスキマ◆1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌「週刊SPA!」やWEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載多数。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』など。新著に『笑福亭鶴瓶論』

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