ヒントの出し方が難しいのではないかと…
――また、ドラマでは“未解決事件”がテーマになっています。
脚本の大森美香先生のご負担が大きいだろうなと思います。単純にアイデアを出すだけではなく、それをどう物語に落とし込んでいくか、キャラクターでどう面白く見せるか、急に事件が解決してはおかしいので、ちゃんとした過程や道筋も必要です。
それを1時間のドラマの中で、現在進行している事件と過去の未解決事件を捜査させるというのは非常に難しいことだと思います。原作の方でも、今の事件を調べていくうちに過去の事件が浮き彫りになっていく、という流れはあるのですが、ドラマでは未解決事件が前面に出ていますから。
作り手の立場から考えると、2つの事件をどのようにリンクさせるのか、そしてそれをどう捜査していくのか、ヒントの出し方が難しいのではないかと…。ですが、その分見ごたえがありますし、1時間で2つの事件が解決されて物語が着地するので、とても面白いドラマになるなと感じました。
――文字を糸口に事件を解決する“文書捜査”というテーマは、どこから着想を得たのでしょうか?
警察小説のシリーズをいくつか書かせていただいていますが、毎回同じテーマだと面白くないので、少し違う切り口がないかと考えました。そんな中、偶然文章心理学というものに出合いました。私は文学部の出身なので、文章とか文字にはもちろん興味がありましたが、文章心理学については全く知りませんでした。
それで何冊か本を買ってみたところ、どちらかというと作家研究に近いものらしいんですね。そのままでは小説の題材になりませんが、この文章心理学をほかの心理学と組み合わせて、警察小説のカテゴリの中に入れたらどうなるのだろう? と思い付きました。
文章を読むことが捜査にどう役立つのか、ということを考えていくうちに、組織でやるには適さないと思ったので、それこそドラマ「相棒」(テレビ朝日系)シリーズの特命係のように、独立した部署を設けてしまおうと。
“倉庫番”と呼ばれる文書解読班(ドラマでは文書解読係)は、文書管理が主な仕事なのですが、そこに文書解読のエキスパートがいる。力があるのに倉庫にこもっているんです。その人が引っ張り出されて現場で捜査をする、という流れを考えたのが「警視庁文書捜査官」シリーズの始まりでした。