名ばかりの主演ですよ(笑)
――周りが濃いからこそ、等身大でいられたのでしょうか?
日常的にデリヘルで働いている子たちに何か言われても(咲田は)ついていけない。ということは、僕もそこまで理解を深めて受け取る必要もない。僕は名ばかりの主演ですよ(笑)。みんながドラマの核心部分を表現してくれているので、その場にポンといればいいだけで、重たい話に日々耐えればいい。
咲田の良さは、何もできないけど(デリヘル嬢たちの話を)聞いてあげるところ。「ちょっと想像もつかない世界ですし…」というのは一切なく、一生懸命聞いてあげちゃうんです。できないくせに一生懸命やろうとする。その部分は大事にしました。
濃い中で普通をやると、普通の人の方がおかしな人。もしかしたら僕が一番浮いている存在だったのかもしれないです。(劇中のデリヘル嬢は)みんな「どうせ、私たちのこと差別しているんでしょ」というのが根底にある。その中で、差別しないで「いや、そうかもしれないですけど、聞きます」というような、異様な優しさっていうのは大事なことかなと思い、みんなとせりふのやりとりをしていました。
――共演者の方の印象はいかがでしたか?
豪華だな、頼もしいなと思いました。中にはデリヘル嬢役をやるのが初めての女優さんもいたかもしれない。でも、松尾スズキさん、荒川良々さんなど先輩方のお力をお借りして、初めての風俗嬢役には働きやすい環境が整っていました(笑)。
前野朋哉君は勝手知ったる仲ですし、今回も存分に“ポンコツ”具合を出してくれました(笑)。仲里依紗さんは初めてですが、「わー! すてきな女優さんだ!」と思いました。仲さんが演じる役は、難役です。それをこんなにも感情移入できる役に昇華させられるというのはすごい。あれをこなされたというのは本当に尊敬します。
――撮影では、本番直前に突然せりふが追加されているところを拝見しました。
ただ、荒川さんにやらせたら駄目ですよ!(笑) 爆弾みたいな方ですから! 最後まで荒川さんは敵か味方か分からなかったです(笑)。荒川さんが笑わせるので、僕が落ち着くまで待っていただいた時間もありました。そういう意味では、笑いが絶えない現場でした。
白石監督は、(直前でのせりふの追加を)誰に対してもやっていました。沖田監督は相談すると「あ、なるほど! それいいですね! やってみましょうか」みたいな感じ。皆さん、ガチガチに固める監督ではなく、その場でできた“現場のノリ”をくんで、新しいものを足したり、引いたり、やってみるチャンスを僕らに与えてくださいました。