<いだてん>金づちだった大東駿介、水泳選手を熱演し「脳より体の方が信頼できる」
失敗を恐れる選択をしたくないなぁ
――全く泳げなかったところからのスタートとは思えない泳ぎを披露されていますが、演じるには苦労が多かったでしょうし、役を引き受けたということも、かなりの決断に思えます。
ちょっと前の自分やったら、もちろん大河ドラマに出させてもらうことは光栄やけど、責任があるぶん、鶴田選手を演じるのは水泳できる人の方がいいんじゃないかって思ったかもしれないです。
でも、僕が初めて出演した大河ドラマ「平清盛」(2012年)で、中井貴一さんとご一緒させてもらった時に、「大河ドラマっていうのは役者人生のターニングポイントに訪れる」と言われたことを思い出して。
それは僕が25歳の時だったんですけど、貴一さんも25歳の時に初めて大河ドラマに出ていて、僕と共演したときは50歳だったんです。だから、初出演から25年を経て、25歳で初めて大河に出演する人の親父役をやってるということがすごく感慨深いっていう話をしていただいて。
僕にとって「いだてん」は、役者人生のターニングポイントにただ訪れてきたわけじゃなく、意識的に何か一本旗をさすような気持ちで臨みたいなって思ったんです。だからこそ、「泳ぎができないからやらない」って言いたくなかった。
今って、失敗にとても厳しい時代だと思うんですが、時代は失敗が築いてきたんじゃないかなと思うんです。だから、自分は失敗を恐れる選択をしたくないなぁと思ってます。
泳げないままで、増量失敗してガリガリで、お腹とか壊して現場に臨むことになってしまったらどうしよう…っていう不安はもちろんありました(笑)。でもこのドラマは、オリンピックへの挑戦を題材にしていますから。特にそういう挑戦を受け入れてやってみようと思いました。
――水泳はどれくらい練習されたんですか?
自分の性質上、練習している最中じゃなくて、練習終わったあとのほうが身になると思ったので、先生をつけて個人練習して、その後にみんなと練習して、またそのあとに一人でプールに行って復習するみたいな感じでした。
なんかすごい真面目なやつみたいに思うけど、別にそんなことないんですよ。
ほんま最初は恥ずかしいんですよ。「こいつ、いつまで前に進めへんねやろ」って見られてるの分かってしまうので。でも、どこかで「見とけよ、絶対変わるから」ってほくそ笑んでる自分もいて。そしたら本当に練習を始めて2カ月後くらいから進むようになって、みんなと競争できるくらいになってきて…体、信頼できるなと思いましたね。脳より体の方が意外と信頼できるというか。
結構泳ぎましたね。本当に水怖かったですからね。ゴーグルもないので、水の中で目を開けるのなんか恐怖でした。
飛び込み練習とかは水が怖くなくなったあとだったので、すんなり進んでいったんですけど、水泳をやる前は「飛び込みってあんなもん人のするもんじゃない」と思ってましたよ!
でも、やってみたら本当に面白かったですね。最初は飛び込みもへたくそやったんで、水にビンタされるような感じやったんですけど、途中からとても上質な羽毛布団に入るかのように感じるようになりました(笑)。
――共演者の方々からも、「大東さんの筋肉は本当にすごい」という声が挙がっていますが、トレーニングはどんなふうにしていったんですか?
クランクインする前は夜中にステーキ食べたり、ご飯も2、3号食べたり、一日7食くらいにして、食事をとにかく過剰にとってました。もともと食べるのは好きだったので、意外と苦じゃなかったです。それで一回増量して、ウエイトトレーニングですね。
こういう話も恥ずかしくて嫌なんですけど、週7でジムに行ってましたね。でも、そういう鍛え方はあんまり良くないそうです。ちょっとバカなんですね(笑)。本当に自分は単純で得したなと思った期間でした。
結果的にタンクトップのシーンがすごく増えて、メークさんも僕の体をオイリーにしてくれて(笑)…モニター見て、「大東君、テカってない?」って言われるほど。
そこまで体大きくできたっていうのは、別に筋肉が好きなわけじゃないんですけど、うれしかったですね。鶴田さんのところまでちょっとは近づけたかな、おこがましいですけど。