「こんにちは」の一言がこんなに言えないのかと思いました
――アナウンサーを演じる上で、苦労した点があれば教えてください。
これまでお芝居をさせてもらった中では関西弁しか話したことがなく、標準語を使ったことがなかったんです。しかもアナウンサーという、標準語を話す中でも一番難しい役どころで…。
でも日常会話で使っている標準語だと違和感があるだろうなと思ったのですが、アナウンサーなら逆に芝居掛かっているような感じでまだやれるかなと。
その言葉そのものを話しているというよりは、せりふを話しているような感覚でやればいいと思っていたのですが、それは大きな間違いでした(笑)。
アナウンサー的な発声というのはものすごく難しくて、結局最後までちゃんとできませんでした。アナウンス指導の先生も途中であきらめていましたね。
――実感・実況放送のシーンなど、熱の入る場面ではさらに難しくなるのかなと思うのですが、いかがでしたか?
実況放送の場面では実際に河西アナウンサーがされていたことというよりも、振り切って自分なりのお芝居で、エモーショナルな感じでやった方が伝わるかなと思ってやりました。
なんとも言えないですが、自分でも面白おかしくできたんじゃないかなと思っています。
一番難しいのは実況部分ではなく、「ラジオをお聴きの皆さんこんにちは」みたいなさりげないアナウンサーの言い回し。
実際に「号砲一発、鳴りました!」みたいなことより、その前のアナウンサー然としたしゃべり方がすごく難しかったです。
アナウンサー的な言い方では「こんにちは」の一言でも全然OKが出なかったですね。「こんにちは」の一言がこんなに言えないのかと思いました。
昔の実況を聞いたり観たりすると、確かに今のアナウンスよりも相当高い声でしゃべっているんですよね。
録音の精度が悪いから余計にそう聞こえるところもあるんやろうけど、そういう感じが自分ではうまく表現できなかったです。
――当時の音源を聞いて役作りの参考にしたりしましたか?
多少はしたのですが、それでは意味がないと思って。物まねみたいにできるようになったところで、果たしてそれでいいのかというのが自分の中で疑問だったんです。どうしても自分の仕事になぞらえて考えてしまって…。
例えば他の人の曲をカバーするときに何度も聞きこんでその人のように歌えるようになってもそれは単なる物まねにしかならないんですよね。
せっかくいただいた仕事の中に自分の個性を盛り込もうとするなら、見本みたいなものを聞きすぎるとそちらに寄っていってしまうので、途中から聞くのを止めました。