多部未華子が出演する映画「続・深夜食堂」が11月5日に公開。それを前に、多部が見どころなどを語ってくれた。
「深夜食堂」は安倍夜郎原作による作品で、映画第1弾は'15年1月に公開。最終興行収入2.5億円、最終動員数20万1000人を記録するヒット作となった。
新宿ゴールデン街を思わせる繁華街の路地裏に、ひっそりと佇む「めしや」。夜も更けた深夜に店が開くことから、人呼んで「深夜食堂」といわれ、そこにはさまざまな人生を過ごしてきた個性豊かな客たちが、まるで引き寄せられるかのように夜な夜な集まり、客たちの悲喜こもごもな人生が交錯していく。
多部が演じるみちるは、老舗料亭で料理人として修行中。福岡から上京し、あることがきっかけで行く当てもなく困っていた夕起子(渡辺美佐子)を助け、彼女の人生に関わっていく。
――続編の決定を聞いた時、どう思われましたか?
みちるという役は物語上でも1話完結で終わらないというか、続きがあってもおかしくない役というのは前作で思っていたので、次も出演させていただけると聞いてラッキーと思いました(笑)。
――作品全体の印象についてはいかがでしょうか?
大きな事件があるわけでもなく、でも個々の人生で転機になるような変化があって、全体から見たらどこにでもあるようなストーリーというのが、見ている方の心に届きやすいのかなと、前回も今回も思いました。そこが魅力なのかな。あと、おいしいご飯!
――みちるというキャラクターについても教えていただけますか?
今回は少しだけ成長しているというか、深夜食堂がある土地に少し慣れてきて、修行も板についてきたくらいの変化があります。おばあちゃんに育てられて、おばあちゃん思いなので、渡辺さん演じる夕起子さんをどうしても助けたくなって。自分がマスターにしてもらったことを思い出して、おばあちゃんに恩返しをするというのでしょうか。優しい気持ちを持った、人とのつながりや教えてもらった事を大事にする女の子だと思います。
――演じるに当たって、多部さんの中で心境の変化などはありましたか?
特にありませんでした。前回は包丁を研ぐシーンなどもあって、撮影前に練習をする時間もありましたが、今回は渡辺さん演じるおばあちゃんとの交流がメインだったので。事前に何か練習する事や、特別に何かを準備したという事もありませんでした。
――今回のみちる以外にもいろいろなキャラクターを演じられていますが、シリアスキャラとコメディーキャラで本当の多部さんはどちらに近いと思いますか?
どちらですかね…。うるさい時はうるさいですし、静かな時は静かですし、普通だと思います。マイペースです。人に気を使えないとよく言われますね。気を使っているつもりなんですが、思っている事が顔に出ているみたいで。私の中では合わせているつもりでも、合わせ切れてないよと言われます。
――マスターを演じる小林薫さんの印象や、何か撮影中のエピソードはありますか?
今回は渡辺さんと2人の撮影が多かったので、マスターとのやり取りはほとんどありませんでした。撮影現場に関しては常連客役の皆さんと小林さんはもう何年もやっていらっしゃるので、撮影の合間もお話をしたりして、チームができています。長年の空気感が出来上がっていたので、前回初めて参加して、すごく緊張しました。でも、今回はもう少し落ち着いた気持ちで、前回よりはとけ込めるようにはなってきたのかなと思いました。
――常連客の方々との接点はありましたか?
そうですね。安藤玉恵さんは他の作品でもご一緒でしたので、よくお話をしていました。舞台を経験されている方が多くて、舞台の話だと私も入っていけたので楽しかったです。あとは、「めしや」のセットに入ったら食べ物が出てくるので、大体皆さん「これがおいしそう」とか、本番前はそういう話をしていました。
――松岡錠司監督の演出についてはどう思われますか?
すごくよくお話をしてくれる方です。今回は渡辺さんとのシーンが多かったので、監督と3人でよく話をしていました。演出の話ではない事をたくさん話して、温まった中で本番を迎えるということが多かった印象です。渡辺さんとのシーンだけではなく、現場の空気感を作るのは監督の力というか人柄というか、それが全部この作品ににじみ出ているような気がするくらい温かい方です。演出だけでなく、コミュニケーションを取って温かい空気感のまま本番に行ける、そういう現場を作ってくださる方だなと。それが計算なのか、ただお喋り好きなのかは分からないですけど(笑)。どちらにしても、作品の雰囲気とか空気感に、松岡さんの人柄が出ているのだなと思います。
――共演シーンが多かったという、渡辺さんはどんな方ですか?
もちろん緊張しました。でも、すごく優しくて、私が言うのもなんですがとてもかわいらしい方でした。チャーミングなおばあちゃんを演じていらっしゃったので、せりふを合わせていて私もとても楽しかったですし、1番近くでお芝居を見られることもすごく勉強になりました。最後の「一緒に寝よう」というシーンが、田舎から都会に1人で出てきたかわいいおばあちゃんを演じてらっしゃるのに、ああいうシーンで“貫録”という言葉だけでは伝え切れない何かというのを出されていて。撮影現場自体も狭かったので、一緒の空間にいて感じることができました。渡辺さんは方言があったので、本番前は方言指導の方と一緒に練習をされていて、私からはなかなか話し掛けることはできませんでしたが、松岡さんが来て全然関係のない話をしたり。だから、お話しする機会はいっぱいありましたし、すごく楽しかったです。
――劇中で「いつか困っている人を見た時、同じ事をしてやれたら…」というせりふがありますが、多部さんが最近した“ちょっとした親切”は何ですか?
海外にいた時に、たくさん道を聞かれました。私も観光客なのに(笑)。一緒に切符を買ったり、道を教えてあげたり。私もキョロキョロしているはずなのに、「どうやって行けばいいの?」って。
――現地の人と間違われたんですかね?
そうですね。海外でヨーロッパ系の人に声を掛けられて、私も分からないんだけどなって。何となく「こっちじゃないですか?」とか。
――きっと多部さんが話し掛けやすかったんでしょうね?
そうなんですかね? でも、いい事をしましたね!(笑)
――ドラマではいろいろな食べ物が出てきますが、これは食べたかった!という物はありますか?
結構ありますね。特にラストシーンでおせち料理を食べるのですが、監督がいつも「みちるちゃんは取り分けようか?」と言うので、カットが掛かるまで全然食べられないんです。取り分ける係になってしまうので、おせち料理をちゃんと堪能してないんです! という愚痴です(笑)。皆さん食べているのに。画面からは背中だから映っていないんですけど、お雑煮はこっそり出汁をすするくらいはしていて。すごくおいしいんですよ。だから、おせち料理もおいしいはずなのに食べられてないんです。
――多部さんは普段、料理はされますか?
全然しないんですよ。でも、もてなしたい、おもてなししたいですね。願望だけはあります(笑)。これから練習します!
――今この瞬間、「何でも料理を出すよ」って言われたら?
鰻です。タレたっぷりで!
――では、多部さんにとっての勝負飯や、無性に食べたくなる物は?
最近、卵かけご飯をよく食べます。生卵って海外では食べないし、生で卵を食べられることがなかなかないので。白いご飯に窪みを作って、そこに卵を落として、しょうゆをたらしてからかき混ぜます。
――屋形船のシーンもありますよね?
楽しかったです! 天ぷらを撮影の合間に出してくれて、すごくおいしかったです。
――屋形船といえば天ぷらですもんね。屋形船に乗ったのは初めてですか?
小さい頃に1回だけあると思うんですけど、大人になってからは初めてでした。ずっと天ぷらを食べていたので、景色はほとんど見ていないです (笑)。でも、ほんの少しだけ見た景色も良かったです。
――最後に、作品の見どころを教えてください。
みちるとしては、少し成長してマスターとの距離感もちょっと近くなっています。淡々とした当たり前の日常に、少しだけドラマチックな事が起こるという、“いつも通り”が1番の見どころだと思います。これまでと同じ感じで楽しんでいただきたいです。
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