2020年は、そんな白鳥の持ち味を活かした出演作が次々と放送・公開される飛躍の年となった。
日曜劇場「テセウスの船」(2020年、TBS系)では、主人公・田村心(竹内涼真)の姉・鈴(貫地谷しほり)の少女時代を演じた。幼い頃の鈴は、真っすぐで意地っ張り、でも正しいことを正しいと言える女の子。粗野なところがある父・文吾(鈴木亮平)に対しても、間違っていると思えば堂々と反論する。
9話では、殺人未遂容疑をかけられ行方がわからなくなった文吾に一度は「人殺しのお父さんなんてもう帰ってこない方がいい」と口にした鈴。だが最終話では、父が疑われる根拠が“ワープロで打たれた文字”だけであることを知り「ワープロの文字なんて誰が打ったって同じだよ」と指摘。「お母さんはお父さんのこと信じてないの?私はこの間お父さん疑っちゃって、すっごい後悔した。お父さんが悪いことするわけないよ」と自分の間違いを認め、「私、お父さんを信じたい!」と訴えた。前を真っすぐ見据えたその目は、強い信念を宿していた。
ワンシーンで鮮烈な印象を残した「エール」
「エール」では、主人公・裕一(幼少期・石田星空)をいじめる気の強い少女・とみを演じた。セリフのある出演シーンは1回のみだったが、そのシーンで裕一に「あんたのそのどもり、父ちゃんのせいなんだべ?父ちゃんが商売ヘタだからそんなになったんだべ」と冷たい言葉を浴びせ、強烈な印象を残した。去り際の冷たい流し目も印象的だった。
とみが大人の女性(演じたのは堀田真由)になって裕一の前に現れ、裕一をこっぴどく振った時、初回から見てきた視聴者なら誰もが「あの時の女の子!」とピンときたはずだ。幼少期のとみは、“妬み”や“怒り”がエネルギーの源であることを十分すぎるほど表現していた。ほぼワンシーンでこれだけの情報と存在感を残したのだから、さすがというほかない。