「知ってるワイフ」のカギを握る久恵(片平なぎさ)
最後に紹介するのは「知ってるワイフ」(毎週木曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)にキーパーソンの一人として登場する人物。片平なぎさ演じるヒロインの母・久恵だ。
本作は、大倉忠義が主演、広瀬アリスがヒロインを務め、夫婦関係に悩む主人公・元春(大倉)が、タイムスリップがきっかけで妻を入れ替えたことにより“本当に大切なことは何なのか”を模索するファンタジーラブストーリー。
かつて元春と澪(広瀬)は夫婦だったのだが、元春がタイムスリップをしたため、現在の妻は沙也佳(瀧本美織)という女性だ。つまり、タイムスリップ後の世界では澪の母・久恵(片平)と元春は、何の関係もない間柄であるはず。
ところが、久恵はなぜか元春をお婿さんだと思っており、元春と会った際も気さくに話しかけてくる。澪が、知るはずのない元春と母が仲良く話すのを不思議に思うのには、もうひとつ理由がある。久恵は認知症を患っており、澪は普段から注意深く行動を見ながら同居しているからだ。
澪に何も告げずに家を飛び出して、一日中バスに乗っているなど、目の離せない行動も増えてきた久恵が、なぜ元春のことはしっかりと覚えているのか。今作の中で久恵は、少し不思議でチャーミングな存在として描かれている。
誰もが“認知症”や“介護”と隣り合わせの現代
以上、放送中の4作は、映画「明日の記憶」(2006年公開)や「博士の愛した数式」(2006年公開)、ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018年、TBS系)等とは異なり、『認知症がテーマのドラマ』ということではない。登場人物の中のある一人が認知症となり、主人公の大切な人が患ってしまった病気という描かれ方だ。
厚労省が2015年に発表した推計(※出典:認知症施策推進総合戦略・新オレンジプラン)によれば、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みとなるという。身近な人の急な変化に戸惑う場面というのは、現代社会のリアルな姿ではないだろうか。
いつ誰が、どんな病気になったり、介護の必要な暮らしになってしまうかは分からない。あたりまえの日々は、突然なくなるかもしれないのだ。
「監察医 朝顔」の最新話で朝顔(上野樹里)は「生きてるって本当はそれだけですごいことなんだよね」と認知症の進行する父に電話で告げた。形は違えどどのドラマも、1日1日を大切に生きていこうとする人々を描いている。
◆文=ザテレビジョンドラマ部