「主人公が必ず恋愛することに違和感があった」ドラマ「恋せぬふたり」制作陣が語る多様性の描き方
男女がくっついて終わるものではないドラマを作りたい
――これまでも「よるドラ」の枠では、「ここは今から倫理です。」や「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。」など、セクシュアルマイノリティや性暴力被害の当事者の方が登場するテーマなどを扱ってきたと思いますが、今回のドラマを含めて、どんな考えで取り組まれていますか?
尾崎 過去作品も同様ですが、考証という形で当事者や専門家の方に入っていただいていて、「当事者の方がこの作品によって傷つくことがないように」とずっと考えて作っています。まずそれがあった上で、ドラマとしてより広く見られるものにしたいということを意識しています。
押田 これまでのドラマは、同性・異性を問わずロマンティックの人たちが描かれたものが多かったと思います。でも、世の中にはもっと多様な人がいて、恋愛をしない、わからない人たちのことが描かれることってなかなか少なかったと思うんです。この「よるドラ」という枠でしかできないことってけっこうあると思っていて。10代とか20代の方だけでなく、いろんな世代の人たちに見てほしいし、はっきりとは分からないけど、まずは、言葉や存在を知ってもらうのが大事だと思っています。色んな価値観がこの世の中にはある。それを受け入れてくれることが、この枠の共通した良い心意気なのかなと思います。
――このドラマの発表があったときには、アロマンティック・アセクシュアルの方を描くということに期待を寄せながらも、結局は今までの恋愛ドラマのような着地点にいきついてしまったらどうしようという声も聞かれましたが、現時点で言える限りで構いませんので、どのような着地点を考えて作られたのかを教えてください。
押田 このドラマを最初にやりたいと思ったのは、多くの恋愛ドラマやラブコメのように、最後は男女がくっついて終わるものではないドラマを作りたいと思ったからなんですね。私自身、そういう展開に終始してしまうと、突っ込みを入れたくなってしまうこともあるし、そこは脚本の吉田さんとも特に話していたことでした。その思いが「恋せぬふたり」というタイトルにあらわれていると思います。序盤の展開がかなり早いのですが、むしろそれは狙いで、2人の恋愛感情抜きの生活がどうなっていくのかを見守るお話になっています。どんな風なラストになるかはもちろん見てのお楽しみですが、ラストにこのドラマが描きたかった一番のテーマが詰め込まれていると思います。
尾崎 今回アロマンティック・アセクシュアルの方を主人公にするということで、決して「ドラマのためにキャラクターを動かす」ということをしてはいけないなと思いました。当事者の方がやらないということをそのキャラクターがしてしまうと、ドラマやストーリー展開のために当事者であるキャラクターを都合よく動かしていることになってしまいます。なので、考証に入ってくださっている方々とコミュニケーションをとりながら、こういった場面では実際にはどうするかということを、キャラクターに落とし込んで作っていきました。
番組情報
NHK よるドラ「恋せぬふたり」1月10日(月)放送スタート
毎週月曜日 夜10時45分~11時15分 <全8回>
【出演】 岸井ゆきの 高橋一生 /
濱正悟 小島藤子 菊池亜希子 北香那
アベラヒデノブ 西田尚美 小市慢太郎
公式サイト
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