何よりもこの冬という季節にたくさん聴いてほしい
愛と感謝と励ましを送り合う相互関係が彼女の創作意欲やモチベーションも刺激したのだろう。
アルバムには前述の2曲のほか、12枚目のシングルのカップリングに収録されていたポップロックで、自分の生き方を自問自答する「全ては不確かな世界」に加え、凍てつく冬を思わせるエモーショナルなロックナンバー「My Heart My Hope」でも作詞を手掛けている。
近年、「今は書きたいことがあまりない」と語っていた彼女にとっては大きな変化だろう。
「意外と前向きというか、やんわりと意欲的ですと言っていいのかな(笑)。まず、シングルのカップリングで久々に歌詞を書くことになったときに、最初は正直、私どうやって歌詞書いていたっけ?と戸惑うところがあったんですよ。でも、実際に書き始めてみると、頭の中で物語が生まれていくという楽しさを改めて感じて。1曲を通してひとつのストーリーを考えるのも楽しかったし、言葉を選んだり、別の言い方を探したり、メロディラインにパズルのようにはめ込んでいくことも楽しかった。ただ、1stフルアルバム『東京 1/3650』のときのように自分の体験を基に歌詞を書くというコンセプトだったら難しかったもしれない。今回は、冬をイメージした物語を描くという作り方だったから面白かったのかもしれません」
声優デビュー10周年を迎え、上京してからの10年間を振り返り、3650日の中のある1日を切り取った1stフルアルバム『東京 1/3650』。
他者から見た“南條愛乃”をコンセプトにした2ndフルアルバム『Nのハコ』。
そして、33歳の誕生日にリリースされた3枚目のフルアルバムで、30代の生き方をテーマにした『サントロワ∴』。
これまではアルバムのコンセプトやテーマの根底に“南條愛乃”がいたが、最新アルバム『A Tiny Winter Story』には別のベクトルで制作されたようにも感じる。
今後はストーリーテラーに徹していくのだろうか。
「実はアルバムのコンセプトを決めるアプローチの仕方は変わってないんですね。冬にリリースできるから、冬のアルバムにしたいと思った。自分の中にある“気持ち”から作り始めたという意味では同じなんです。だから、今後は内面に向かったアルバムをつくらないということではなくて。どうなっていくかはわからないけど、そのときそのときの自分の気持ちを向き合いつつつくれたらいいなと思ってます。ただ、確かに、今回は内面に向いてないアルバムなので、私自身はこれまでのアルバムより気軽に聴けるし、すごくいいアルバムができてよかったなという気持ちでいる。みんなも歌詞を考察するより、純粋にお話を楽しんでもらいたいし、何よりもこの冬という季節にたくさん聴いてほしいなと思いますね」
『A Tiny Winter Story』発売中(https://lnk.to/yoshino_nanjo_tinywinterstory_CD)
13th Single「ヒトリとキミと」
2022年2月23日リリース(https://lnk.to/yoshino_nanjo_hitoritokimito_CD)